女性初の工場長になったママ社員の「価値観」 「女が来た」から始まった現場での格闘
――多様性が組織を強くする、とべセラ社長や人事の臼田さんからも伺いました。多様な発想は新しい製品を生むだけでなく、働き方のヒントにもなるのですね。
加えて、経験や研修を通じて、人から有益な助言を得るやり方も学んでいきました。たとえば私は6月から生産統括部門の執行役員をしています。このポジションを10年ほど経験した人が海外にいますので「あなたはどんなふうに仕事をしたの?」と聞くと、何でも教えてくれるのです。
助けてもらう側が自立して考える
――上手に助言をもらうコツはありますか?
相手に何をしてほしいのか、自分で明確にすることでしょうか。誰に、いつ、どのように助けてほしいのか。助けてもらう側が自立して考えることが大事だと思っています。
私自身「メンターになってください」と言われることがあります。できるかぎり助けになりたいのでOKします。ただ、具体的に何を求めているかは、本人に言ってほしいです。そこは、大人と子どもの関係とは違うので、待っているだけではいけないと思うのです。
もちろん「今日は、ただ、愚痴を聞いてほしい」ということもあるでしょう。そういうときは「10分間、愚痴だけ聞いてください」と言えばいいんです。
――部下を育成する立場から、男女の違いを感じることはありますか?
私自身の経験ですが、たとえ能力に差はなくても、言動に男女差が出ることはあります。たとえば、男性は8割くらい準備ができていれば、提示された機会を生かそうとします。でも女性の場合、120%の自信がないと「やります」と言わなかったりする。女性が少ない部門では、特に女性が失敗を恐れて完璧主義になりがちです。
こういう女性を外から見ると「やる気がないのかな?」「あまり上にいきたくないのかな?」と思うかもしれません。人それぞれで、皆が「ハイ! どこそこの部署に行きたいです!」とはっきり言うわけではない。
そういう場合、背中を押してあげるのは上司の役目だと思います。「イヤならいいのだけれど、やってみない?」と声をかけることは、意識してやっています。
――そもそもなぜ、工場には女性が少ないのでしょうか? どうしたら増やせますか?
工場勤務の仕事で募集をかけると、男性しか応募してこない、という話をよく聞きます。だから採用が難しい。ここを改善する方法があります。私が工場長の時、求人広告に「女性歓迎」と書いたら、応募がたくさん来たことがあります。「これは女性の仕事じゃないかな」と思われているので、一押し「歓迎しています」と伝えることは大事です。
本気で女性を増やしたいなら、ひとりだけポツンと配置したらいけません。必ずチームに2人以上入れる。同性がいれば体調のことも相談できますから、孤立しにくくなり、力を発揮しやすくなります。肉体的な負荷を機械化などで減らすことの意義は、お話ししたとおりです。
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