新宿ゴールデン街がバブル以来の好況なワケ 一時ゴーストタウン化も「東京一の観光地」に
ゴールデン街復活の直接の契機となったのが、バブル後もこの街にわずかに残った商店主達が始めた各種公共インフラの再整備事業であった。戦後に花街として始まったこの地域は、木造店舗が長屋状に密集していることもあり、部分的な改修が非常に難しく、上下水道はもとよりガスや道路舗装などのインフラ整備がなかなか進まない地域であった。バブル崩壊後にこの地域に残った商店主達は、域内商業者が減りゴーストタウン化した事を逆に好機として、今まで難しかった地域の各種インフラ更新を画策した。商店主らは、域内の商業者組合を通じて地域行政との交渉を開始、その結果、1996年に行政は各種インフラの更新工事に着手し、翌年の1997年にその工事が完了した。
域内の各種インフラの近代化が進んだ一方、地域に長らく残されてきた昭和の香りを残す木造長屋形式の「レトロな街並み」を意識的に残してきた。
多くの都市開発では、ゴールデン街に代表されるような木造建築の密集地域は「防災上、好ましくない」とされることが多く、それこそ現在の歌舞伎町中心部のように道幅を広く取った鉄筋コンクリート造りの商業施設に建て替えられることが多い。だが、ゴールデン街を管理する商店街の場合は、組合員が積極的に防火管理者(乙種)資格を取得し、自主的な夜警活動を行うなど、ソフト面での努力を重ねながら昔ながらの木造長屋形式の街並みを守ってきたのだ。2007年と2009年には、新宿区からの助成を受けて、域内の街灯や看板の整備が行われたが、この時もあえてレトロ調のデザインの設備にこだわり「昭和の古き良き飲み屋街」のイメージを維持し続けてきたのである。
観光客の6~7割は外国人観光客
こうした地域による「街並みの保存」によって、ここ数年の間にゴールデン街はバブル景気の絶頂期以来の大きな繁栄を見せている。現在、この街を支えているのは観光客だ。「昭和の古き良き飲み屋街」の雰囲気を残す街並みが観光資源として注目され、現在のゴールデン街には日が傾く前から観光客があふれ始める。近年、特に目立つのは日本を訪れる外国人観光客の存在であり、この地域を訪れる観光客のうち6~7割を占めるという。
2009年には、フランスの有名観光ガイドブック「ミシュラン日本版観光ガイド」において観光地として2つ星の評価を獲得するまでになった。
一時はゴーストタウン化していた新宿ゴールデン街は、こうして文字どおり東京随一の夜の繁華街として見事復活を遂げたのだ。
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