日本株の「今年の天井」はいったい何月なのか 米経済悲観論は過剰でも2つのリスクに注意
そもそも、債券再投資の縮小を行なう前の現時点で、米国のマネタリーベース(連銀が供給した資金量を測る指標)は、若干ながら縮小し始めている。前年比でみると、2016年3月から現在に至るまで、毎月すべてマイナスだ。連銀が少しでも資金を吸い上げれば、米国経済が膝を折り、世界の株価が暴落するのであれば、とっくにそうなっているはずだ。
一方で、経済全体の資金量を測る指標の一つであるM2は、QE3(量的金融緩和第3弾)実施時も、QE3の終了後も、前年比が概ね7%前後で安定推移している。これは、QEとして連銀が銀行に流し込んだ資金が、連銀の金融政策の変化にかかわらず、貸し出しとして安定した伸びで経済全体に出回っているからだ。この背景には、景気が安定的に拡大しているため、家計や企業の資金需要が安定して伸びているという要因がある。M2に変調が生じなければ、経済に対する悪影響も想定しにくい。
「長期金利低迷」はどう解釈するのが正しいのか?
先週は、注目された6月分のISM製造業景況指数、同非製造業景況指数、非農業部門雇用者数などが強かったため、いたずらな景気悲観論はいったん声を潜めているのかもしれない。また、景気悲観論者は、少し前まで、「私の主張する、米国経済の悪化予想は正しい、なぜなら長期金利が全く上昇しておらず、これは債券市場の投資家たちが、先行きの米国経済の悪化を正しく予想しているからだ」と、大声で唱えていた。これも、6月は2.15%まで下押しした米10年国債利回りが、2.4%までジワリと上昇していることで、かなり旗色が悪くなっているのではないだろうか。
そもそも、10年国債利回りの低迷は、債券の投資家が米経済の悪化を予想していたためだろうか。名目の国債利回りは、実質経済見通しに即した部分(インフレ連動債利回り)と、物価見通しに沿った部分(インフレ連動債利回りと10年国債利回りの差、期待インフレ率とほぼみなしてよい)に分解できる。
今年の両者の動きをみると、インフレ連動債利回りは概ね横ばいで推移しており、債券の投資家は、総体として、米国の実質経済成長力が低下するとは、全く考えていなかったと言える。10年国債利回りの低下は、主として期待インフレの後退によってもたらされたもので、しかも投資家がデフレになると思っているわけでもなく、2%程度の物価上昇だと考えていたものが、今では1.7%程度だと見込んでいるだけに過ぎない。
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