プロ野球選手を陰で支えるバット職人の真実

12球団130人の製作を手がけた男が語る

――「好きな野球で食っていく」ことを諦めないといけない……。

熊谷氏:ところが唯一、仕事をしていても野球に携わり続けることができるかもしれない、と思ったのがこの会社でした。実は、高校の野球部時代、ZETTの社員がよく学校に来ていたんです。会社のロゴが入った社用車でやってきて、監督と談笑する。その姿を「かっこいい」と感じ、密かに憧れていました。

当時、高卒採用があったのはこの会社だけだったので、すぐに応募しました。採用された時は、大好きなスポーツの世界に関わり続けることができると嬉しい気持ちでいっぱいでしたね。そうして故郷長野から、都会である大阪へ。胸を躍らせながら向かったことを覚えています。

「会社の宝」バット職人との衝撃の出会い

バットの製造現場を目にした私は、釘付けになってしまった

――“好き”を諦めずに、大好きな野球の世界に居続けることができる。

熊谷氏:働く気満々、意気揚々と入社しました。最初に配属されたのは物流部門。東大阪にあった物流センターで2年間、最初はバットとは直接関係のない部署にいたんです。

福井にも物流センターができるということで、こちらに異動したのが、ご縁というかきっかけでした。長野の田舎から大阪の都会生活を満喫していたので、縁もゆかりもない場所に赴任することに、正直最初はとまどっていました。

――最初からバットの道が開かれていたわけではなかった。

熊谷氏:本当に偶然と、人との出会いのおかげでした。福井の物流部門に異動した後、さらにこちらの生産部門に移ったのが、バット職人という仕事との出会いでした。物流部門と同じ敷地内にバット工場があり、そこではじめてバットの製造現場を目にした私は、釘付けになってしまったんです。

夏目さんという、のちにバット製作における私の師匠となる先輩社員の働く姿がとにかく格好よくて……。一本の木材が、バイトと呼ばれる専用のノミで削られ、みるみるうちに一本のバットに仕上がっていくことに、言葉では言い表せないような、高校時代に働く大人を見たとき以上の、「憧れ」を抱いたんです。

次ページバット製造の部門への異動願いを出したが…
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