プロ野球選手を陰で支えるバット職人の真実 12球団130人の製作を手がけた男が語る
真剣勝負の武器づくり バット職人の仕事
――(ZETT武生工場、応接室にて)たくさんのバットが置かれています。
熊谷昌典氏(以下、熊谷氏):選手から記念として送っていただいたもので、古いものですと半世紀近く前のものもあります。サインやメッセージが添えられたホームランの記念バットや、海外選手が母の日のために特注したピンク色の練習用バットなど、この工場でつくられたさまざまなバットがここにあります。
私がバット職人として独り立ちし、初めてつくらせていただいた元千葉ロッテマリーンズ、初芝選手のバットもあります。今では珍しいアオダモ材(材木の種類)を使用して作られたものになりますね。
――セ・パ両球団、たくさんの選手が、熊谷さんの元を訪ねられています。
熊谷氏:12球団、約130人の選手のバット製作を任せていただいています。バット製造自体は年間を通して、日々開発・生産をおこなっていますが、特にプロ用のバットの製作が本格始動するのは、秋季キャンプが終わりにさしかかる11月後半くらいからです。
「いかに選手の身体の一部分として違和感なく、かつ本来の能力を発揮できるか」。選手の成績や、秋季キャンプでの選手とコーチとの方針結果など、いろいろな角度から選手と直接話し合って、来シーズンに向けての目標を打ち合わせするところから、バットづくりは始まります。