
ハンナ・アーレント『新版 全体主義の起原3 全体主義』大久保和郞、大島かおり 訳/みすず書房
『全体主義の起原』を著したハンナ・アーレントの指摘によると、全体主義イデオロギーは現実世界から遊離した一貫性のある「虚構の世界」を構築し、それを大衆に信じ込ませようとした。事実に反するような主張であってもプロパガンダとして繰り返し流布することで、人々の客観的な現実認識を破壊していった。
もっとも、全体主義は既存の法体系や国家組織を必ずしも廃止するわけではない。形式的には存続させつつ、事実上無視したり骨抜きにしたりする。
ナチス政権下でも、当時世界で最も民主的とされたワイマール憲法は廃止されなかった。ただ全権委任法やさまざまな緊急令によってその効力は完全に停止された。既存の外務省や軍といった国家組織と並行して、外務局や親衛隊など、党の組織が任務に当たった。
トピックボードAD
有料会員限定記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら