「日経平均2万円割れ」で日本株は崩れるのか 「出来高の減少」は相場が下落する兆し?

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実は、テクニカル分析のなかに出来高と株価の推移をよくあらわしたもので、「逆ウォッチ曲線」と呼ばれる指標がある(代表的な解説はこちら)。作り方は極めてシンプル。出来高を横軸、株価を縦軸にとって日々の交点を結んでいくだけだ。時計回りの逆(左回り)に描かれる「円形」を8つの局面に分けて、売買ポイントを探るためのツールとしても使われる。詳しくはビデオなどをご覧になっていただきたいが、要するに「右半分」(6時~12時)が上昇相場、「左半分」(12時~6時)が下落相場。買い手が注意すべきポイントは「株価上昇、商い縮小」の高値警戒のサインだろう。

なお、個別株の逆ウォッチ曲線をつくるとわかるが、個別株は丸い円を描かず、いびつに歪むことが少なくない。これは個別株の値動きと商いの増減が激しいからだ。しかし、5年~10年の長期スパンで追うと、好業績・高収益の中小型成長株は複数の逆ウォッチ曲線を形成しながら、右肩上がりの上昇ラインを描いていくのがわかる。これは業績拡大にともなう株高とともに、時価総額や発行済株式総数の増大が背景にある。テクニカル分析(逆ウォッチ曲線も含め)は、なるべく近視眼的なアプローチは避けるべきだ。長期的視座で大きな流れをまず読んだうえで、短期的視座にも立って売買タイミングを図ると失敗が少ない。

相場はいったん調整局面を示唆?

ここでもう一度直近の日本株を確認してみよう。足元の東京株式市場では投資余力が高まった個人投資家が中小型株へ資金を振り向け、日経ジャスダック平均株価は26年ぶりの高値を更新している。しかし、東証1部の売買代金上位をみると、投資指標面から割高感のあるゲーム株等に逃げ足の速い資金が集中、昨夏同様、物色の偏重が重なっている。

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東証1部売買代金は5月(1日当たり2.46兆円)に比べ6月(同2.41兆円)がわずかに減少した一方、6月20日の日経平均株価は2万0230円と年初来高値を更新。その後は円安局面にもかかわらず、7月6日には2万円を割れるなど、上値が重くなりつつある。株価上昇と商い縮小の逆行現象から、ここからの上値余地に慎重な投資家も少なくないはずだ。7月の日本株はよりいっそう商いの増減に注目したい。出来高は株価に先行するといわれるなか、ボリュームの変調は海外勢の投資姿勢を示唆する。仮に薄商い(東証1部売買代金2兆円未満)が続くようであれば、夏枯れ相場が鮮明となり、いったん調整局面が訪れそうだ。

さて、私が所属している非営利の団体・日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)では、「テクニカル分析について学びたい」という読者の方々のためにハンドブック(初級編②)を作成しました。前回大好評をいただいた基礎編、初級編①に続く3冊目になります。無料で配布しておりますので、興味のある方は、NTAAのHPからぜひお申し込みください。なお、基礎編、初級編①はNTAAのHP内(出版事業をご参照)で読むことが可能です。

中村 克彦 みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト

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なかむら かつひこ / Katsuhiko Nakamura

IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)、日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)評議員。

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