北朝鮮「ICBM発射成功」は巨大災厄をもたらす 米本土「射程入り」にトランプはどう応じるか

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北朝鮮の発表によると、今回発射されたのは「火星14」と名付けられたICBMである。通常より高い角度で打ち上げる「ロフテッド軌道」で発射され、過去最高高度の2802キロまで到達、933キロを飛行して日本海に落下した。飛行時間は39分間。一般に30分以上も飛翔すれば、ICBM級の弾道ミサイルとみられることが多い。

5月14日に同じロフテッド軌道で打ち上げられた「火星12」の最高高度が2111キロ、飛行距離787キロ、飛行時間30分だっただけに、今回の試射ではミサイル技術力のさらなる向上を誇示する結果となった。ちなみに北朝鮮は、ノドンやムスダンなど液体燃料を使う弾道ミサイルを「火星」、固体燃料を使う潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)とその地上配備型を「北極星」と称している。

今回のミサイルは中距離弾道ミサイルの弾道軌道

米太平洋軍は最初の声明で、ミサイルの種類を中距離弾道ミサイルと特定したと発表した。ICBMの射程距離は、かつての米ソ戦略兵器制限条約(SALT)交渉に基づき、一般に5500キロ以上と規定されている。飛行距離の933キロだけをみれば、確かに中距離弾道ミサイルの弾道軌道だ。

しかし、火星14号がロフテッド軌道ではなく、通常の角度(30-45度)で発射されれば、最大で約6700キロの射程まで到達可能と指摘する専門家もいる。

この射程であれば、ハワイやカリフォルニア州は難しいが、なんとかアラスカには届く。北朝鮮から米軍の要衝グアムは約3400キロ、ハワイは約7000キロの距離にある。米国の西海岸に届くためには8000キロ以上の射程を持つ弾道ミサイルが必要になる。米国の北朝鮮情報サイト「38ノース」の兵器専門家、ジョン・シリング氏は、火星14号が軽量の弾頭を搭載するならば1万キロまで到達可能との試算を示している。

金委員長が開発を推し進めるICBMは最大射程距離1万2000キロで、ニューヨークやワシントンのようなアメリカ東部地域まで打撃を加えることのできるKN-08とその改良型となるKN-14だ。度重なるミサイル発射実験のほか、今年3月18日と6月21日にはロケットエンジンの燃焼試験を行った。5月14日発射の火星12号は、この3月18日の新型の大出力エンジンを搭載したとみられている。

金正恩氏がこれほどまでにミサイル実験を重ね、ICBM完成を目指してきた理由は何か。大きく4つの理由がある。

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