米国とロシア「サイバー戦争」のリアルな危険 水面下でせめぎ合いが続く現状

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まず、ロシアがサイバー攻撃でどのように米大統領選に介入したのか具体的に振り返る。

ロシアのハッカーが米民主党全国委員会のシステムに侵入したのは2015年のこと。そこから1年にわたってシステム内に潜伏し、幹部の電子メールなど大量の重要情報を盗み出した。そして2万通の内部メールが、内部告発サイト『ウィキリークス』などで暴露され、民主党全国委員会の幹部たちが、党内の指名候補争いでヒラリー・クリントン候補に勝たせようと肩入れしていたことなど、不都合な事実が明らかになった。情報を盗んだハッカーに、民主党のクリントンを貶める目的があったことは明らかだった。

実は、FBI(米連邦捜査局)は2015年9月までに、ロシアと関係のある何者かが民主党全国委員会のシステムに侵入していることを確認していた。そして再三再四、捜査官が全国委員会に警告していたにもかかわらず、全国委員会はその警告を放置。結果的に情報を盗まれたことで、全国委員長や幹部らが責任を取って辞任に追い込まれた。また大統領選と同時に行われた州議会選挙でも、民主党候補が暴露メールに端を発したスキャンダルに巻き込まれるケースもあった。

このハッキングが最終的にどれほどのインパクトを与えたのか、正確に測ることはできないが、少なくともクリントンの側近の多くは、ロシアのサイバー攻撃が選挙に重大なインパクトを与えたと主張している。

「どうなっても知らないぞ」と詰め寄ったオバマ

米政府はこうした事態にどう対応したのか。オバマ政権は、選挙戦の行方に影響を与えるのを避けるため、表立った動きはできる限り避けてきた。それでも、2016年9月に中国で開催されたG20杭州サミットで、オバマは直接プーチンと対峙する。オバマはこう詰め寄った。

「何を実施しているのか分かっている。止めないと、どうなっても知らないぞ」

プーチンは、証拠を出せと反論した。その上で、アメリカもロシアの内政に干渉していると指摘したという。また10月には、米国土安全保障省と米国家情報長官室がロシアの犯行を公式に表明。さらに12月、オバマ政権はロシアの外交官35人と家族に対して国外退去を命じるなどの制裁措置を発表した。

こうした対応以外にも、2016年10月にはこんな動きがあった。米『NBCテレビ』の人気報道番組『ミート・ザ・プレス』にジョー・バイデン副大統領(当時)が出演し、単独インタビューでこの問題に言及したのだ。そこでは、こんな意味深長なやり取りがなされた。

司会者であるジャーナリストのチャック・トッドは、「サイバー攻撃を受けて、なぜプーチンに強いメッセージを投げていないのか」とバイデンに聞いた。他国からの選挙への干渉に、政府として何かすべきだと指摘したのだ。

バイデンはその質問に、まっすぐトッドを見つめたまま2秒ほど押し黙った。そして一瞬、ふと口角を上げ、ニヤリとして、「『メッセージ』は送る。私たちは、それができる能力をもっているからだ」と答えた。さらに、「彼ら(ロシア)がやってきたのと同じようなレベルで実施されるだろう」と付け加え、公には悟られないように行われるとも示唆した。

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