「2階建て高速列車」フランスがこだわる理由

日本ではもうすぐ消える運命だが…

フランスは、人口のパリ一極集中という特殊な環境下にある。周辺地域を含めたパリ首都圏の人口は約1100万人だが、その次に大きい都市はリヨン170万人、マルセイユ150万人と大きく差が開く。そのため、鉄道にしても道路にしても、真っ先に建設されるのはパリから放射状に延びるルートで、パリから各都市へ、もしくは各都市からパリへ向かう旅客が最も多い。

フランスで最初に建設された高速新線は、1981年にパリ―リヨン間に建設された南東線で、その後西へ延びる大西洋線、ベルギーや英仏海峡トンネル方面の北線と続いた。在来線では半日かかった場所も、高速列車ならわずか数時間で到達できることから、TGVの利用者数は急速に伸びていった。

特にパリ―リヨン間は、距離的にも時間的にも、他の交通機関と比べてTGVが圧倒的に有利であった。増え続ける乗客数に対応するため、10両編成を2本つなげた20両編成の列車を増やしていったが、1990年代に入ると、それでも満席となる列車が後を絶たなかった。列車本数もギリギリまで増やしていったが、日本の新幹線と異なり、ターミナル駅は在来線と共用するため、それ以上列車本数を増やすことは困難となった。

輸送力増強の切り札として

ペルピニャン近郊を走行中のTGV-Duplexの2編成併結運転(筆者撮影)

このような状況下で、混雑緩和の切り札として考え出されたのが、客室をすべて2階建てとして座席数を倍にする2階建て車両であった。ただし、最高時速270〜320キロで運転されているフランス国内の高速新線で、車体大型化による重量増は極力抑えなければならず、素材一つひとつを見直すなど、開発は困難を極めた。

こうして1996年に登場したTGV-Duplexは、輸送力増強の切り札として、まずは南東線パリ―リヨン間に投入された。その効果は絶大で、現在では同区間を運行する列車のうち、スイスやイタリア、ベルギー方面の国際列車を除いて、ほぼすべての列車について2階建てのTGV-Duplexへ置き換えが完了している。

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