スバルの懐刀「アイサイト」は競争に勝てるか ぶつからないクルマが、また一歩進化した

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今後注目が集まりそうなのが、アイサイトの先に描く「自動運転」に対するスバルの姿勢だ。

業界の潮流は明らかに変化している。これまで自動運転に関する情報発信に慎重だったホンダもこの6月に、ドライバーの介入を想定せずにシステムが全操縦を行い、その責任も負う「レベル4」の完全自動運転を、2025年までに実現する計画を公表した。

ホンダが開発した、市街地での完全自動運転が可能な試作車(写真:ホンダ)

今回のバージョンアップで、アイサイトも高速道路上でのアクセル、ブレーキ、ハンドル操作の自動制御を行う「レベル2」の自動運転へと進化した。

スバルが目指すのは自動運転ではなく、あくまでも「自動車事故ゼロ」であると繰り返す。前出の大拔常務は「自動運転で事故があったらまったく意味がない。事故を減らすための機能を追求することが、おのずと自動運転にも繋がっていくのでは」と、安全を最優先に開発を進めることを強調した。

スバルも「レベル4」自動運転を目指す

一方で、2020年までにレーダーなどのセンサー類を追加し、高速道路上での自動車線変更を行う新アイサイトを開発、さらにはシステムがすべての操作を行い責任も負う、自動運転における「レベル3」や「レベル4」の開発を検討していることも明らかにした。

しかし、走りの楽しさを自負するスバルが「運転席が特等席」というポリシーを変えることはないという。「行きは楽しく運転して、帰りの高速道路の渋滞では、自動走行で楽をする。シーンによって使い分けをしてもらえればいいと思っている」(大拔氏)。

アイサイト・ツーリングアシストは渋滞時のゆとりある運転を可能にした。しかし激化する自動運転の開発競争を生き抜くには、難題が山積みだ。開発現場では、なかなかゆとりが生まれそうにない。

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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