キャプテン翼が「Jリーグ」の危機を救った日 村井チェアマンが語る、Jリーグの今後(上)

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――交渉で苦労したのはどのようなポイントだったのか?

まず、交渉中は完全に情報を管理し、途中で漏れることはいっさいなかった。理事の中でも全員とは共有していない。途中で情報がリークされることで、スカパーに対して放映権料を吊り上げたりするようなことだけはしたくなかったからだ。

時間がかかったのは、日本には独特の地上波テレビ文化があることをパフォームに理解してもらうことだった。「日本にはローカル局があり、そこでサッカー中継に触れることでダ・ゾーンへの加入も促進される。食い合いになることはない」という議論にものすごく時間をかけた。日本の事情を丁寧に説明し、本気で議論を交わした。パフォームも真剣に向き合い理解してくれた。だから、独占契約にはなっていない。

また、Jリーグが制作を担当し、著作権を持つことも大きなポイントだ。今は中継を見るといろいろ考える。ユニホームに選手の名前がないチームがあるとか、このカメラアングルがとてもいい、とか。

リアルなユーザーの姿が浮かび上がった

たとえば、13時キックオフの試合があり、スタジアムの影がピッチの半分を覆っていた。選手は紺色のユニホームを着ていて、何をやっているか見えにくい。日照時間や角度がわかっていたら白系のユニホームを推奨すべきだったとか。そんなことを考える自分がいる。以前は「中継は各社各様でお任せします」と言っていたので、あまり考えたこともなかった。

これから中継の技術も上がっていく。もっとわかりやすく伝えていくことができるようになる。パフォームは、細かなテクニックや選手間の緻密な連携が日本のサッカーの優位なところとよく指摘していた。そうした点をもっと前面に出していきたい。

――中継がダ・ゾーンになり、これまでと何が変わったのか?

サッカーだけでなく、数多くのスポーツのニュースやダイジェストを100カ国近くで配信するような企業なので、撮影技術など彼らから学ぶことは多い。サッカー中継に関する表現の技術とか、金額には換算できないものを学んでいる。

さまざまなデータを把握できるようになったことも大きい。ライブの視聴者数はもちろん、J1、J2、J3を全部見ている人の割合はどれくらいか、どの端末で見たのか、見逃し配信を3日目に見た人数など、ユーザーのリアルな視聴動向がわかる。ユーザーとの関係性が明確になったのは何よりの収穫だった。

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