タブー視する日本人が知らない潤滑剤の真実 「ローション」との違いを知っていますか

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「当時はアダルトショップは過度期で、女性スタッフやバイヤーを雇用して、女性客も取り込みたいという動きが見られ始めた時期でした。それまでの“男性が自分のために買う潤滑剤”から“カップルで使う潤滑剤”“女性にとって安心できる潤滑剤”へと必ず移行するはず、とバイヤーさんたちが好意的に受け入れてくれたおかげで、少しずつ販路を広げていけました」(小林氏)

国内での潤滑剤販売においての壁は、思いもよらないところにあった。

「潤滑剤は中高年以上の女性にとっても必需品です。女性ホルモンの一種、エストロゲンが閉経によって低下すると自然な潤いや膣の弾力が失われ、性交痛を感じる人が出てきます。同時に性欲も低下するので、それを機に夫と寝室を別にする――これが長らく中高年女性のライフサイクルに訪れるパターンとされてきました。女性同士で集まって“私はもう、卒業したのよ”と言われると、まだまだ性生活を楽しみたいけど性交痛があるという女性は、悩みを口にしづらい状況になってしまいます」(小林氏)

そうでなくとも、日本では同性同士の間でも性についてオープンに話さない。セックスについて語る=シモネタと受け取られる風潮もあり、具体的な悩みを打ち明けたりその解決法をアドバイスし合ったりといったことが難しい。性の健康についての対話も情報交換もなされない文化に、小林さんは壁を感じたという。

「たとえばドイツではこうした潤滑剤やセックストイを販売するアダルトショップは往来に面したところにあり、ガラス張りのショーウインドーに商品を陳列しています。ファッションブティックと変わらないからコソコソお店に入る必要もないし、堂々と商品を買えます。一方、日本では性は“隠さなければいけない”という意識が強いですよね。特に年齢が上の人ほど、その傾向が見られます」(小林氏)

小林さんは、更年期前後の女性がよりよく生きるために、健康、生活面のアドバイスをする“メノポーズカウンセラー”としても活動している。

性の悩みを解消する手段がわからない

「女性誌でも更年期の健康や美容についての特集は多く見かけます。お肌や髪の悩み、体型の悩み、メンタルヘルスの悩み――でもそこにセックスの悩みが出てくることはほとんどありません。同じ世代の男性が読む雑誌では、盛んに“死ぬまでセックス”特集をしているのに、不思議ですよね。確かに“セックスはもういい”という人も少なくないですが、この先も続けたいという人も多くいます。私の印象では既婚者よりも、未婚で恋人がいる人、離別死別して新しいパートナーと出会った人のほうが、性生活を続けたいと願っているように見えます。それなのにセックスの悩みを解消する手段を知らなくて、お付き合いに積極的になれない……。更年期の後も人生は長く続きます。性の健康に気を配ることは、そのQOLを上げることにつながるのではないでしょうか」(小林氏)

本来であれば性の悩みの受け皿となりうる婦人科関係の医療者にも、潤滑剤の知識を身に付けてほしいと小林さんは願う。ドラッグストアのスタッフにも理解があれば、女性たちはもっと手軽に潤滑剤を買えるようになる。

「シャワールームにボディソープやシャンプーがあって、洗面所に化粧水があるように、ベッドルームには潤滑剤とコンドームがある。性の健康を守りながら満足感を上げていくため、日本でもそんな習慣が広まるといいですね」(小林氏)

性をいやらしいこと、エロいこととしかとらえないのはある意味、思考停止だろう。よりよいセックスには、安心と安全が欠かせない。それをサポートするモノが実は世界にはたくさんあるにもかかわらず、私たちがそれを知らないのはとてももったいないことなのだ。

三浦 ゆえ フリー編集&ライター

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みうら ゆえ / Yue Miura

富山県出身。複数の出版社を経て2009年フリーに。女性の性と生をテーマに編集、執筆活動を行う。『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』シリーズや『失職女子』などの編集協力を担当。著書に『セックスペディア-平成女子性欲事典-』がある。

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