大阪市「地下鉄民営化」後の険しい道のり 値下げや関連事業、市の予測は実現できるか

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関連事業などの項目については、地下鉄事業者として初めて民営化された東京地下鉄と比較するとイメージをつかみやすい。国土交通省の統計をもとに比べてみると、東京地下鉄が関連事業で展開している流通、不動産、広告・ITの各事業が2014年度に計上した営業収益は130億円であった。

ただし、東京地下鉄はこれらの関連事業を2004年4月1日の民営化を期して始めたのではない。前身の帝都高速度交通営団の最終年度である2003年度も関連事業の営業収益が129億円計上されていた点を踏まえておく必要がある。

民営化で必要になる「納税」

続いては鉄軌道業営業費を見ていこう。2014年度の1178億円と比較して2018年度が1261億円、2022年度が1223億円とそれぞれ増えていく最大の要因は租税公課が新たに加わったからだ。大阪市交通局の高速鉄道事業部門(以下、単に大阪市交通局)は公営鉄道であるために、これまで固定資産税や都市計画税といった地方税を納める必要はなかったが、民営化によって納税の義務が生じる。

2018、2022、2027の各年度でほぼ80億円と見込まれている租税公課のうち、最も多くの割合を占めると考えられるのは固定資産税だ。大阪市交通局が保有する鉄軌道業専属の固定資産は2014年度で1兆1126億円と東京地下鉄よりも多い。いっぽうで東京地下鉄が納めている地方税は87億円である。大阪市としては多少の減免措置を講ずるつもりかもしれないが、予測されている租税公課はやや少ないのではなかろうか。

固定資産税を大まかに求める方策として、鉄軌道業専属固定資産と地方税との割合が東京地下鉄と同等で、高速鉄道事業会社の鉄軌道業専属固定資産の残高が2014年度と同じであったと考えてみた。すると、高速鉄道事業会社が納めるべき地方税は95億円となる。

80億円前後か95億円かは別として、ともあれ租税公課が新たに発生するので高速鉄道事業会社としては鉄軌道業営業費を何とかして減らしたいところだ。大阪市は人件費の削減をもくろんでおり、2014年度と比べるとその金額は2018年度は57億円、2022年度は99億円、2027年度に至ってはなんと173億円もの減となる。

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