大阪市「地下鉄民営化」後の険しい道のり 値下げや関連事業、市の予測は実現できるか
一般に大阪市議会と呼ばれる大阪市会は、2017年3月28日に開会の本会議で「大阪市交通事業の設置等に関する条例を廃止する条例案」を可決し、大阪市交通局が実施する事業は2018年4月1日をもって民営化されることとなった。
民営化に当たっては、同交通局が実施する事業のうち、地下鉄に関する「高速鉄道事業」と新交通システムに関する「中量軌道事業」は両者の総称である高速鉄道事業として、バスに関する事業は自動車運送事業として分離される。6月1日には、高速鉄道事業の受け皿となる準備会社の大阪市高速電気軌道株式会社が設立された。いっぽう、後者は高速鉄道事業会社の子会社となる大阪シティバス株式会社が事業を引き継ぐ。
民営化は何をもたらすのか
さて、「地下鉄事業株式会社化(民営化)プラン(案)」(2017年1月改訂)という大阪市の資料によると、大阪市は民営化の理由として次の3点を挙げている。「経営体質の強化」「スピーディなサービス改善」「多様な事業展開」だ。ほかにももちろん理由はあり、国鉄や日本電信電話公社や日本郵政公社の民営化と同じく、ゆくゆくは株式を公開すれば大阪市は売却益を得られる。
国土交通省鉄道局監修の『鉄道統計年報』を見ると、2002年度に大阪市交通局が抱えていた3438億円余りにも上る累積欠損金は2014年度に姿を消した。累積欠損金は大阪市交通局が計上した当期利益(税引後。以下同)を充当して解消されており、その努力に賛辞は惜しまないものの、いっぽうで不可解な会計処理も見受けられる。
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