グーグルが生んだ「自動運転車」に乗ってみた 黎明期から開発にかかわるエンジニアを直撃

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自動運転技術を磨いた先に目指すものとは、何なのか。「われわれは車自体を造るわけではない。これまでのプロトタイプはすべて実験のためだった。さまざまな車に適用できる自動運転技術を作り上げ、(自動車メーカーなど)パートナーと協力し、マスマーケットに出て行きたい」とチャタム氏は説明する。

試験走行だけを続けていても、本格的な事業化には近づけない。この4月、ウェイモはアリゾナ州フェニックスで、自動運転車を活用した試験的なタクシーサービスへの参加受付を始めた。一般の市民に広く利用してもらうのは初めての試みとなる。

一般市民は自動運転をどう使うのか

フェニックスの住民は世帯単位で申し込み、審査を通過すると、通勤や通学、買い物などに利用できるようになる。ウェイモのドライバーが安全確保のために同乗する。参加者には自動運転の利用体験をフィードバックすることが義務づけられる。サービス開始に合わせて、パシフィカの自動運転車を現状の100台から600台へと増やす。

一般向けサービスに踏み切れた理由としてチャタム氏は「ディスエンゲージメント比率をはじめとする、社内のさまざま定量的基準が改善したことが大きい」とする。「一般の人の反応は非常に重要。(自動運転車が)居心地がよく、信頼に足る場所になりうるのかを見極めたい」(同)。

5月には米国の配車サービス大手、リフトとの提携も発表。リフトも自動運転を活用したサービスを実験中だ。ウェイモとしては、タクシーサービスの提供地域拡大などを狙ったものと見られている。

この半年間、多くのニュースで自動車業界を騒がせてきたウェイモ。Xからの分社化はその予告だったといえる。グーグルの社内プロジェクトだった頃は、「研究開発ばかりで実用化の道筋が見えない」との声も挙がっていた。そんな憶測を吹き飛ばすかのように、ウェイモは事業化に向け加速を続けている。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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