グーグルが生んだ「自動運転車」に乗ってみた 黎明期から開発にかかわるエンジニアを直撃

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ただ、発進がやや急であったり、左折(日本の場合は右折)がやや大回りなことが気になった。人間の運転とは異なる動きをすると、エンジニアがノートパソコンにその様子を書き込んでいく。このフィードバックが自動運転システムの細かな調整に役立てられるのだという。

大きな交差点に差し掛かった際、突然車が大きく蛇行した。手を離していたドライバーが、ハンドルを取ったのだ。

前方にトラックが停車していたが、車高が高かったため視界が悪かった。そのためシステムが、車のいない右の車線に移りトラックの前に回ろうとした。だが、安全に万全を期すよう求められているドライバーが、元の車線に戻そうとハンドルを取ったのだった。

このように試験ドライバーがハンドルを取り自動運転モードを解除することを、「ディスエンゲージメント(離脱)」と呼ぶ。ウェイモの走行試験における離脱の割合が昨年、劇的に改善した。2015年、1000マイル(約1600キロメートル)当たりの離脱回数は0.8回だった。これが翌2016年には0.2回と、1年で4分の1に減った。

ウェイモで主席エンジニアを務めるアンドリュー・チャタム氏(記者撮影)

「ウェイモはソフトウエアとハードウエアの両方を自社開発しているからだ」

ウェイモで主席エンジニアを務めるアンドリュー・チャタム氏は、技術の進展の理由についてそう語る。チャタム氏は2009年のプロジェクト発足時から開発にかかわる古参メンバーだ。

グーグルのAI技術をフル活用

ソフトウエアはグーグルが培ってきた機械学習をはじめとする人工知能(AI)技術をベースとする。「グーグル・ブレイン」と呼ばれるAI研究チームと共同で開発を進めている。

運転技術をシステムに学習させるためには、大量の走行データが必要だ。天候や道路状況、人の往来など、いかなる状況にも対応できるようにするため、ウェイモはこれまでに米国内で300万マイル(約482万キロメートル)の公道走行を実施。また並行して、さまざまな状況を人工的に用意した試験走行や、昨年1年間だけで10億マイル(約16億キロメートル)に上るコンピュータ上のシミュレーション走行も積み重ねられてきた。

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