東芝、メモリ売却を巡る「泥仕合」の一部始終 合弁相手の米WDと激しい応酬が続く
WDがマジョリティを持つ形での東芝メモリ売却となれば、独禁法上の審査に時間がかかることは確実。東芝としては到底、飲むことができない。東芝は2018年3月末までに売却を完了し債務超過を解消できなければ、判断の余地なく上場廃止となってしまうためだ。
半導体産業・技術を日本に残すことにこだわる経済産業省も、WDのマジョリティ取得はノー。WDの提示する買収金額が1.5兆円程度と他の買い手候補より圧倒的に低かったこと、KKRの評価も高くなかったことなどもWDを含む日米連合案の障害となった。
だが、東芝もWDも簡単には席を立てない。東芝はWDの仲裁申し立てを取り下げてもらわないと他の候補との交渉が進めにくい。
WDにとっても対立が長引くのは得策ではない。合弁の製造に支障が出れば両社とも傷つくだけ。「お互いに争ってもサムスンを利するだけ」という声は両陣営から聞こえてきていた。WDのスティーブ・ミリガンCEOが度々来日して東芝の綱川智社長らと会談し、INCJとの共闘も再度模索されていた。
東芝の強硬策
しかし、しびれを切らした東芝が強攻策に出た。それが31日に明らかになった、出資持ち分を東芝本体に戻すという奇策だ。子会社の東芝メモリへの持ち分移管が「契約違反」とするWDに対し、訴えの前提をなくす作戦だ。
それに対してWDの関係者は「国際仲介裁判所への申し立ては撤回はしない」と徹底抗戦の構えを見せる。
WDはなぜかたくなに“抗戦”するのか。それはメモリ事業におけるWDの立場がもともと微妙だからだ。
東芝とWDが提携するメモリ事業は、かなりユニークなスキームになっている。技術開発は東芝とSDの共同で行うが、チップを製造する四日市工場の土地、建屋などを東芝が提供する。そして製造したチップは一定シェアで分け合い、それぞれが販売する。
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