フランス国鉄が「TGV」ブランドを捨てる事情 新ブランド「inOui」は定着するのか
SNCFにはTGVのほかに、「Ouigo(ウィゴ)」という高速列車もある。ウィゴとはフランス語の「Oui(=はい、イエス)」に英語の「go」を組み合わせた造語だが、英語の「Here we go!」のwe goを音的にもじったものも由来とされている。低価格を売り物にしており、格安航空(LCC)の鉄道版とでもいえようか。
SNCFは今回のリブランディングによって、inOuiを1等車やビュッフェカーを編成するフルサービスの列車、OuigoをLCC的なエコノミーの列車という形にサービスを二極化する計画を明らかにした。
SNCFは2020年までにinOuiへのリブランディング、Ouigoとの差別化にかかる車両の改装やPRなどの費用として総額25億ユーロ(約3100億円)を投入するという。この取り組みを通じ、SNCFは高速鉄道の年間利用者数を現在の1億500万人から、2020年に1億2000万人まで引き上げたいとしている。
投資額が大きいことから、ペピ総裁は報道陣から「料金の値上げがあるのでは」と追及されたが、「超高級志向ではなく、料金は上げない」と即答し、「2015年からの2年間でTGVの料金は6%ほど下がった」と鉄道の割安さをあらためて強調した。
サービス二極化でどうなる?
さて、inOuiとOuigoへのサービス二極化はどのように図られるのだろうか。
inOuiは従来のTGVのサービスを踏襲するが、車内へのWi-Fi接続設備の設置、シートピッチの拡大、荷物置き場の拡充などを図った上で、1等車両やビュッフェカーを残す。その上で新しいロゴや塗装に変えていくことになる。
なお、フランスにはTGVと同じ車両を使いながら、事前割引によりお得な料金で利用できる「iDTGV」という編成があるが、目下のところ、iDTGVがリブランディングによりどのような方向性に変更されるのかは具体的に示されていない。
一方、低価格高速列車のOuigoは、都市部の中心から離れた駅から発着するのが特徴だ。編成は2等車のみでビュッフェカーの連結はなく、荷物置き場の削減も図っている。いすの仕様がTGVと比べて簡素でシートピッチも縮めるといった工夫を行った結果、2階建て車両TGV Duplex(10両編成)の1編成当たりの乗客人数は一般型が510人前後なのに対し、Ouigo用は634人まで増えている。
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