フランス国鉄が「TGV」ブランドを捨てる事情 新ブランド「inOui」は定着するのか

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その一環として、SNCFでは同社のチケット購入サイト「Voyage-SNCF」を「Oui.sncf」に改名、eコマース経由でより便利な切符の購入や予約、乗車ができるように、利用者向けのIT関連インフラの向上を図る考えだ。

SNCFではこれまで「Voyage-SNCF」などを通じて、事前購入による格安チケットを積極的に販売。乗車日だけでなく列車や座席を指定し、払い戻しできない条件でよりお得な料金を利用者に提供している。

しかも事前に自宅やオフィスでチケットをプリントして持参する、というシステムで、改札の手間なく直接車内に乗り込めるようになっている。割引の仕組みについては、フランス国内のTGVだけでなく、スイス、ベルギーなど周辺国と繋ぐ高速列車(タリス、ユーロスター、TGVリリアなど)にも適用されている。

日本では導入可能か?

SNCFはフランスでの高速鉄道の運営だけでなく、国外への進出も積極的に展開しようとしている。たとえば、英国・ロンドン―バーミンガム間で2026年の開通を目指し準備が進められている高速鉄道「ハイスピード2(HS2)」に対し、SNCF、英国で鉄道・バスの運行を手掛けるステージコーチ、およびヴァージン・グループ傘下ヴァージン・トレインズと共同で、フランチャイズ(営業権)を獲得するための入札に参加する旨を明らかにしている。

TGVという国民が慣れ親しんだ名前を惜しげもなく捨て去り、SNCFは新たな方向へと舵を切った。向かう先は、多様なサービスへの対応だ。一方で、日本では「新幹線」が唯一無比の高速サービスだが、フランスのようにリブランディング化して、価格やサービスの違いでブランド名を分けるといったことが果たしてできるだろうか。

収益性の高い高速列車の運営権独占が崩れる前に、どのような施策を打っていくのか、SNCFのこの先の展開を見守りたい。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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