なぜ男たちは「藤原ヒロシ」に行列するのか 男消費、女消費はこんなにも変わってきた

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『MEN’S CLUB』が1970年代にアイビールックを流行させ、石津謙介氏がトラッドを教条的に明文化した時代から、1980年代アメカジブームに至るまで、日本のメンズファッションは“勉強好きな日本人男子”を刺激し、独特の変化を遂げた。日本型うんちく消費に支えられ、BEAMSやUNITED ARROWSといったセレクトショップでそんなこだわりのアイテムが売れる時代が長く存在した。

女の服は「コミュニケーションツール」

このようにうんちくが牽引した「男消費」は今なお健在だが、それとは対照的に「女消費」は刻々と変化している。

1990年代にファッション誌全盛の時代があったことを覚えている方もいるだろう。当時は世代ごと、ファッション雑誌ごとでその服のテイストには大きく差があった。

ギャル、コンサバ、セクシー系、モード系……。服のジャンルは細かく分かれ、それぞれのコミュニティはあまり交差することはなかった。

しかし近年は、全体に「均質化」が顕著だ。ギャルはほとんど見かけなくなり、セクシー系も少数。雑誌を眺めても、若者向けの『non-no』『ViVi』からガールズ系の『Sweet』 、はたまたアラサー向けの『CLASSY.』、ママ雑誌『VERY』まで、取り上げられる服のテイストは似かよっている。

「頑張らない抜け感」というキーワードで、同じアイテムが登場する。今年でいえばGUがCMを投入して押している“盛り袖”と“抜き襟”シャツだ。

最近10代、20代女性の間では「双子ファッション」という、上下の服から靴、バッグまで同じアイテムを着こなす友達同士が増えている。靴からバッグまで同じアイテムを着こなす友達同士。これはちょっと極端な例だが、コミュニティ間のファッションの均質化は、女性マーケット全体の現象だ。

いつからか、ファッションは人との差異を見せるものではなく、同質化を見せる道具となっている。人と違えば排除される。学校であれ、会社であれ、ママ友であれ、同調することは生きる術であり、ファッションの機能となる。リアルショップでも似た服、売れる服ばかりが並び、売り場も平均化する。

そんな環境で生きる今の女性たちは、いったい何に「行列」するのか。筆者が眺めるかぎり、この4月、5月目立った行列はほぼ “ファン”と“食”に集約される。

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