BMW「M5」、開発中の次期型に乗ってみた 4WD⇔FR切り替えも可能なスーパーセダン

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結論から言おう。Mファン、そしてM5ファンのみなさん、どうかご安心を。次期型M5は、現行型よりもいっそうパワフルでスパルタン、なおかつラグジュアリーな走りもみせる、新時代のスポーツサルーンだった。

元F1ドライバーで、現在はBMWワークス・DTMドライバーを努めるティモ・グロックの先導で、サーキットを模したテストコースを攻めてみる。

まずは、エンジン始動時のデフォルトモード、DSCオン+4WDモードで走り出す。ステアリングフィールはずしりと重く、フロントアクスルからも常に引っ張る力を感じるという点で、4WDを大いに意識する。はっきり言って、あまり気持ちいいものじゃない。けれども頼もしいV8ノートに誘われ、アクセルペダルをひと踏みしてみると、車体は弾かれたように飛び出した。

クルマが軽い。それでいて四肢はしっかりと路面を捉え、すさまじく安定している。もっとも、安心志向が強いがゆえに、たとえばワインディングロードなどで頑張って走ってみたい、といった場面では楽しみきれない予感があって、気分のいいものじゃない。確かに動きは正確だしそれなりにスポーティだが、リズムに乗りきれない感覚がつきまとう。

要するに、通常の4WDモードは、アウトバーンをかっとぶような場面がお似合い。なるほど、よくできたGTであると言うこともできるだろう。

次期型M5はスポーツモードで覚醒する!?

Mファンにはお馴染みのMDM(Mダイナミック・モード)を選ぶと、自動的に4WDスポーツモードが選択され、リアアクスルへのトルク配分も増して、断然、FRらしい動きになる。ステアリングホイールははっきりと軽くなり、ノーズの動き方もダイレクトで鋭い。それでいて、着実に路面を捉えてくれるのも判るから、安心して踏んでいけた。

リアのブレークもある程度、許す。とはいえ、危なくない程度に制御されており、クルマをとことん信じていけば、600馬力のマシンを存分に楽しめる。最新のスーパーカーと同じ志向だ。個人的には、このMDMモードが最も楽しかった。

さらにDSCをオフにすれば、4WD、4WDスポーツ、そして完全FRのなかから好みのセットを選ぶことができる。FRでは、前輪はMDMよりさらに軽やかに動くから、デフォルトモードに比べると、まるでミドシップカーのように前から重量物が消えてなくなったかと思うほど。

乗り手の腰から後には巨大な力の塊が常にその存在をアピールしている。オシリがむずむずするのだ。それを右足で徐々に解放していく。慎重さに欠くと、後ろに蓄えられていた力がいっきに吹き出し、スピンモードに陥る。あっというまに、右足がビビりはじめた。尋常ではないスパルタンさ。深いキズを負わないうちに、楽しいMDMへ戻したのは、言うまでもない。

4WD仕様となり、強力な心臓を得た次期型M5は、極上のビジネスエクスプレスとして使うことも可能だ。4人乗りのスーパーカーである。けれども、望めばウルトラスパルタンなスポーツセダンにもなりうる。

これほど極端に方向性の違うふたつのキャラクターを備えたスポーツセダンなど、かつてあっただろうか?

(文:西川淳)

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