フォードがハケットをCEOに抜擢した理由 シリコンバレーと闘うための大決断
フォードは、かつてデトロイトの自動車メーカー「ビッグ3」の中でも最も経済的に安定していた会社の1つであり、また政府による自動車産業財政援助の際にも資金援助を受けなかった唯一の自動車メーカーである。
そのフォードは、2015年に最高売り上げを報告したものの、アメリカの全体的な自動車の売り上げが下落するにつれて、現在ではあらゆる面でプレッシャーを受けている。
GMによる攻勢
ライバルであるゼネラルモーターズ(GM)は、収益が高い北アメリカのトラックとスポーツユーティリティ事業のフォードのシェアを積極的に標的として狙っている。同事業はフォードの収益の90%を占める。
一方で、投資家らはフォードが電気自動車、自動運転テクノロジーとライドシェアへの移行において遅れをとっていると見ている。フォードの4400万ドルという市場価値は、電気自動車の先駆者であるテスラモーターズの市場価値5100万ドルを下回っている。
ビル・フォードをはじめとするヘンリー・フォードの後継者たちは、所有する特別な株式を通じてこの自動車メーカーを効果的にコントロールしてきたが、多くの投資家は同社がライバルに対して遅れを取ってきていると懸念しているのだ。
政権との関係も微妙だ。フォードはメキシコでの事業を拡大してきた。そのため、ドナルド・トランプ氏は「アメリカの雇用が失われた」と1年以上にわたって選挙活動で繰り返し批判してきた。その批判に対し、フィールズは反論をしてきた経緯がある。しかし、フォードの代表者は、トランプ氏との関係がフィールズの免職の要因ではないと述べている。
アメリカの自動車売り上げは長い好景気の後、下降をたどっている。しかしGMはフォードよりも迅速に売り上げにつながらない事業を切り捨てており、テスラは新しいテクノロジーを配置するのが早かった。
フォードは費用を削減するためにさらに積極的な行動に乗り出すと、ビル・フォードは言及している。「事業を現代化」しなくてはならず、そして「成果が上がっていない部分を断固として処理する」ことに乗り出さなければならないとフォードは話す。
ハケット氏は、家具メーカーのスチールケース社を徹底的に見直し、低迷していたミシガン大学のフットボールプログラムを好転させた実績をもつ。彼は、フォード家系出身ではないCEOとして、自動車産業の最も古い会社の経営方針を変える権限を与えられた。
この経営方針を変えるという業務は、ボーイング社の重役であったアラン・ムラーリーに役職を譲るまでCEOを務めていたビル・フォードを含め、前任者たちに挫折感を与えるものだ。