成田パッシングの急先鋒、日中制覇に動く 《対決!世界の大空港3》ソウル・仁川
貨物では日中を制覇 セントレアは仁川の軍門に
「北京支店で販売する商品の半分は中国-ソウル-日本という仁川経由の路線。中国人観光客はこれで日本に遊びに行き、帰りにソウルで1、2泊するという行程が多い」。こう話すのは、大韓航空と並ぶ韓国系航空会社であるアシアナ航空の玄東實(ヒュンドンシル)・専務日本地域本部長だ。
日本の地方空港を“制覇”した仁川が次にターゲットとする先、それが膨大な潜在需要を持つ中国だ。先述のとおり、現在仁川の外国人旅客の最多は日本人だが、急増する中国人が日本を追い抜く日は近い。
仁川の中国への就航数は35都市、週720便。すでに日本の25都市、週329便を大きく凌駕している。中国では空港インフラの整備が需要増に追いつかないため、海外に出る代替手段としては利用価値が高い仁川が選ばれているという。
これに対し、「中国-日本-欧米・アジアという路線のポテンシャルも非常に高いが、今の成田や羽田は中国人を取り込むチャンスを生かし切れていない」と玄氏は指摘する。
“中国人大移動”という商機を目前にしても、身動きのとれない日本。さらにもう一つ仁川に大差をつけられたものがある。貨物輸送だ。
かつて世界1位を誇っていた成田空港を追い抜き、仁川空港は今や貨物量では香港に次いで世界2位に躍り出た。その原動力は日本と中国からの需要獲得だ。
仁川を利用する大韓航空は貨物量で昨年まで4年連続で世界1位。中国で大量生産したIT機器などを次々に集荷し、仁川から世界に送り出している。その勢いは日本にも押し寄せた。昨年12月、貨物の国際ハブ空港を目指していた中部国際空港(セントレア)がプライドを捨てて大韓航空と提携。仁川経由の貨物便サービス「セントレアコネクション」を始めた。中部は成田と関西に挟まれるなど国内競争も激しく、ハブ空港の目標を棚上げ。結局、中部はライバル・仁川の“ローカル空港”にならざるをえなかった。
仁川にかなわないのは成田も同じだ。トランジット貨物の割合は仁川が約7割に対し、成田は約2割。大韓航空の崔秉先(チェ・ビョンソン)・日本地域本部次長は一蹴する。「日本の空港は高コスト構造。成田の空港使用料は仁川の約3倍。それではシビアな航空貨物業界では負ける」。日本と中国という2大大国に挟まれながら、韓国はしたたかに隣国の需要をのみ込みつつある。
(週刊東洋経済)
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