成田パッシングの急先鋒、日中制覇に動く 《対決!世界の大空港3》ソウル・仁川

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新潟発の仁川乗り継ぎは3年で3倍以上に急増

7月5日土曜日の早朝。市内から車で約20分で着く新潟空港。午前9時半発の大韓航空の仁川行きのチェックインカウンターには、順番を待つ人たちの長い行列ができていた。

中でも、目立つのは大きなスーツケースを抱える人たち。その1人、菓子製造販売会社の男性社長(75)は興奮ぎみに話す。「これからスイスに行く。2回目だけど、前回は成田に出るだけで疲れた。今回は新潟発着のソウル乗り継ぎで気持ちが楽。また利用したい」。

この新潟-ソウル便。大韓航空が2年前に午後から午前出発にダイヤ改正した。ソウルに昼前到着することで、午後1時や2時台に出発が多い欧州や中国、米国などへの乗り継ぎをスムーズにしたのが特徴だ。これまではソウルで乗り継ぎ時間が長いケースもあったが、これを解消し、まさに日本人向けダイヤにした。裏返せば、韓国人は若干使いにくいダイヤになったが、日本人を優先する異例の決断をした。

結果は予想以上だ。新潟発の仁川経由の乗り継ぎ客は、05年度比で07年が2倍、08年度は3倍以上と急増。仁川乗り継ぎの6割が欧州方面に向かうという。大韓航空の金森慶多・日本地域本部次長は「もちろんソウルを目的地にしてもらいたいが、それでは限界がある。その先に乗ってもらうことで収益を上げることが重要だ」と話す。

仁川乗り継ぎの韓国系航空会社便は、以前から東京や大阪からでも利用されていて、安く入手でき、サービスも日本人好みというメリットがあったが、近年はこうした地方からダイレクトに海外にアクセスできるというメリットが大きなウエートを占めるようになった。

先の男性社長が参加したのは地元の旅行会社、新潟日報旅行社が企画した新潟空港発着のスイスツアー(合計25人)だ。仁川を乗り継いでスイス・チューリヒに向かう行程。新潟日報旅行社の森國男社長は「新潟発着のニーズは非常に高い。人が集めやすく収益も上々。仁川経由だと路線数も豊富で商品の幅が広がっていい」と手放しで喜ぶ。

大韓航空の新潟支店では昨秋、「新潟発世界行き/大韓航空で世界33カ国・102都市へ」と題したパンフレットを1万部作成し、地元の旅行代理店に配った。一柳誠新潟支店長は「新潟に限らず、地方の海外旅行比率はまだ低い。県とも協力して仁川での乗り継ぎキャンペーンを展開していきたい」と意気込む。

もちろん、仁川乗り継ぎが便利でなければ、航空会社や旅行会社がいくら音頭を取っても、旅客は誰もついてこない。ここであらためて、仁川経由の使い勝手のよさを成田経由との比較で見てみよう。

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