親はそれを聞いてショックを受けました。今まで、その子は何かを嫌と言ったことはなかったからです。そして、やり始めたものは何でもすぐうまくなり、良い成績を取ることができました。ですから、親は本人も喜んでいると思って、あれもこれもといろいろやらせてきたのです。親は決して押し付けているつもりはなかったのです。
佐藤さんの母親も、自分が子どもを苦しめているということに気づいていなかったと思います。中学受験も子どもが自ら「やりたい」と言い出したと思っているでしょうし、体操部に入ることも強制したわけではないからです。でも、見方を変えれば、それだけ巧妙だったともいえます。というのも、子どもがそう言い出すようにうまく仕向けてきたからです。
子どもを親の自己実現のために利用してはいけない
特に女の子に多いのですが、親の気持ちをよく察知して自ら先回りして親の期待に添うような行動をする子がけっこういます。そして、これもまた女の子に多いのですが、まじめで自己管理力が高い子はイヤと言わずに頑張ってしまいます。その分そのストレスは強くなり、弊害がいろいろな形で出ることになります。
佐藤さんのように子どもらしい明るさがなくなって暗い気持ちになったり、件(くだん)の女の子のように、突然すべてを投げ出してしまうこともあります。あるいは、はけ口を求めて弟や妹をいじめたり、急に親に猛反発したりすることもあります。つねに自分のやりたいことを抑えて成長した結果、「自分が本当にやりたいことがわからない」「自分は何のために生きているのかわからない」という状態になり、鬱屈とした気持ちで長く苦しむこともあります。
佐藤さんは、鈴木さんと知り合ったおかげで自分を見つめ直すきっかけができました。そして、1度爆発することで親の過干渉から抜け出すことができ、自分が本当にやりたいことを見つけることもできました。でも、もし鈴木さんと出会わなかったら、そして、爆発しないままでいたらどうなっていたでしょうか? ずっと鬱屈とした状態のまま苦しんでいたかもしれません。
みなさんはこのような微妙な過干渉をしていませんか? 子どもの人生は子どものものですから、親が奪ってはいけません。子どもを親のコピーにしたり、親の自己実現のために利用したりしてはいけないのです。子ども自身がやりたがることを応援してあげましょう。そして、自分がやりたいことを自分で見つけて、どんどんやっていける人生にしてあげてください。
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