「ほたるの夕べ」が60年以上続いているワケ 椿山荘で楽しめる幻想的な光景

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しかし課題となっているのが、少子化、結婚離れ、挙式離れの傾向だ。厚生労働省の人口動態統計を見ると、過去最高の婚姻件数は、第2次ベビーブームの1973年(約110万件)。その後いったん減少し、2000年前後には80万件台に回復するも緩やかな減少を続け、2016年は62万1000件となっている。もっとも「式や披露宴自体は豪華になっている」(黒沢氏)という傾向もあり、現在のところ、市場規模が劇的に縮小するというほどではないようだ。藤田観光が大阪で経営する「太閤園」も、和婚人気の高まりで、好調に推移しているという。

2012年、藤田観光はフォーシーズンズとの業務提携を終了。2013年よりブランド名を「ホテル椿山荘東京」と改めた。同時に、ホテルとしてのブランディング強化を図っている。

「フォーシーズンズから離れたことで、海外での認知度が当時に比べて低下したことは否めません。しかし、ミシュランガイドで10年連続で最高ランクを獲得、フォーブス・トラベルガイドでの4つ星を獲得など、一般の評価基準に照らしながら、ラグジュアリーホテルとしての認知を高めていきたいと思っています。また、私どもは宴会場を多数抱えておりますので、イベント利用にも期待しています。たとえば、都会の喧噪から離れた場所柄、ビジネスのミーティングやパーティ、研修に利用されることも多くなっています」(本村氏)

5月9日に発表された2017年12月期、第1四半期決算短信の売上高を見ると、宴会部門は全体で前年同四半期比4400万円増収の14億4300万円。対して宿泊部門は全体で前同2100万円減収の5億5500万円となっている(以上、ホテル椿山荘東京を含むラグジュアリー&バンケット事業グループより)。婚礼部門や宿泊部門の減収を、宴会部門で補っているという状況のようだ。

「外国人は虫を愛でる習慣がない」という盲点

「ほたるの夕べ」のイメージ(写真提供:藤田観光)

看板である日本庭園は外国人にはアピールが高そうに思えるが、インバウンドの取り込みではまだ成果を出し切れていないところがあるようだ。「ほたるの夕べ」に関しても誘致を図ったものの「外国人は虫を愛でる習慣がない」という盲点もあった。確かに、秋の虫の音を特別なものとして聞き分けられるのは、日本人とポリネシア人だけだという説もある。

「虫をめでる文化は日本人独特のようですね。しかしながら外国の方も、実際に庭園で蛍が舞う様子を見るとその魅力に納得する方も多いので、海外の方々にこの魅力をいかに伝えていくか、は今後の課題です」(本村氏)

外国人はともかく、「モノよりコト」に価値を置く現代の日本人に対しては、期間限定の貴重な体験として強くアピールする。

今年は5月13日に初飛翔が見られたようだ。庭園内の「ほたる沢」や、水車の付近が観賞しやすいスポットだという。客が増えすぎても環境管理が大変になるのかもしれないが、古来の日本の魅力を感じられる場所として、もっと認知されてもいいのではないだろうか。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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