「ほたるの夕べ」が60年以上続いているワケ 椿山荘で楽しめる幻想的な光景
藤田観光では、椿山荘の庭園以外に千葉県の木更津、長野県の野尻湖湖畔と、自社所有の敷地内に3カ所の飼育施設を設け飼育に取り組んでいる。気温差があるため、木更津と野尻湖では、蛍の上陸時期が20日間ほどずれる。45日間という長期間にわたって「ほたるの夕べ」が開催できるのはそのためだ。
「水質の管理などが難しく、試行錯誤を繰り返しながら蛍の飼育を続けてきました。飛翔後も、気温が高いと弱るため、屋外空調機などを設置して蛍に適した気温を保つなど、工夫をしています」(本村氏)
放った後は混ざってしまうのでわからないが、人工飼育している蛍のほかにも、庭園内で産卵し、命の循環を続けている蛍もいるという。
戦後の歩みとともに、蛍に力を入れてきた椿山荘。環境整備のためのコストなども小さくはないだろう。ここまでするだけの、経営的なメリットはどこにあるのだろうか。
「たとえば開催期間にビュッフェを利用されるお客様は、平均して日に300人ほどです。そのほかジャズイベントやパーティプランなども用意していますので、そちらを利用するお客様もいらっしゃいます」(本村氏)
一例としてビュッフェの料金を挙げると、午後7時から9時までの2時間で、料理と飲み物を合わせて大人1人9800円(金土日は1万0500円)だ。ビュッフェ会場となる宴会場は複数あるため、定員は設けられていない。
また、庭園が大きな目玉となっているだけに、客寄せとなる桜が散った後は、客足が遠のく時期なのだという。この時期の蛍の付加価値を上げる存在として、ホタルには大きな期待がかかっている。
「記憶に残してもらう」ことのメリット
「単独の収支ももちろんですが、お客様や地域の方への認知度を上げる側面のほうが、より重要だと考えております。60年と言えば3世代にわたります。私どもは、結婚などの人生の節目で利用されることが多い施設ですから、節目における選択肢として記憶に残してもらうことのメリットが非常に大きいのです。子どもの頃から足を運んでいただいていたお客様が、思い出深い当ホテルで挙式されたという例もたくさんあります」(本村氏)
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