アマゾンが他サイトでの決済に乗り出す思惑 もはや市場はオンラインだけじゃない
これについて、ゴティエ副社長は「ネット利用者の多くは、事業者間で細かい顧客データがやり取りされることを好まない。アマゾンの役割はあくまでチェックイン、チェックアウトを容易にすることであって、事業者と顧客の『仲介』ではない」とキッパリ。「細かいデータが欲しい場合は、事業者側と顧客間で関係性が構築されてから、事業者側が質問項目を設けたらいいのではないか」。
もう1つの利点は、セキュリティ面。アマゾンでは独自の不正検出ツールなどを導入しており、たとえば中小のショッピングサイトなどでも、「アマゾンレベル」のリスク管理をすることができる。不正手法が高度化する中、中小企業が自前でセキュリティを強化するには限度があるだけに、コスト面でのメリットは小さくないだろう。
「アマゾン経済圏」を着実に広げる
では、アマゾンにとって、自社サイト外でアマゾンペイを使って買い物できるようにする利点は何だろうか。1つは単純に決済手数料収入が入ること。アマゾンでは現在、物理的なグッズやサービスについては一律4%、デジタルグッズについては同4.5%を徴収している。
アマゾンでは販売を行っていないブランドなどを、決済を通じて取り込むことで、アマゾン経済圏を拡大する狙いもある。ゴティエ副社長によると、アマゾンペイ導入当初は中小企業が利用するケースが多かったが、最近では大手や高級ブランドが取り入れることも増えている。ゾゾタウン、アディダスというのがいい例だろう。
言わずもがなだが、ネットの世界では「デファクト・スタンダード」になることほど強いことはない。名だたるハイテク大手が決済事業でしのぎを削るのは、先進国でだけでなく、新興国でも今後、ネットショッピング利用が大きく伸びることが見込まれるから。その中で、地道に事業者や利用者を増やし、経済圏を広げていくことで、「誰もが使う決済のスタンダード」となるメリットは計り知れない。
もっとも、アマゾンが見据えるのはネットの世界ではない。小売業界では、ネットとリアル店舗をつなげる取り組みが盛んに行われているが、アマゾンでも顧客がリアル店舗での買い物でモバイルを通じてオーダーをしたり、支払いをしたりできるサービスを提供し始めている。
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