「自民党」盤石じゃないが優位は崩れない理由 固定票は減っていても他党に比べれば分厚い
「安倍一強」、「自民党一強」が止まらない。このところ、森友学園や加計学園など、安倍首相を直撃する疑惑が相次いで浮上しているが、なおも強気の政権運営が続いている。それを可能にしているのは、自民党の選挙での異常なまでの強さである。
低下する絶対得票率
自民党は安倍晋三総裁の下、2012年の総選挙、2013年の参議院議員選挙(参院選)、2014年の総選挙、2016年の参院選と、国政選挙で4回連続の勝利を続けている。しかも、2度の総選挙で獲得した衆議院の議席率は、いずれも61%強である。
1970年代の与野党伯仲を乗り越え、保守復調と呼ばれた1980年代でも、50%台にすぎなかった。中曽根康弘内閣の時期、参院選とのダブル選挙で圧勝した1986年の総選挙でも58.6%の議席率であったことを考えると、最近の自民党の強さは歴史的な水準に達しているといえる。
しかし、拙著『自民党――「一強」の実像』でも指摘しているが、はたして自民党の強さは盤石といえるのか。総選挙における自民党の絶対得票率の推移を検討したい。相対得票率は、ある政党や候補者の得票数が有効投票数の中に占める割合を指す。一方、絶対得票率は、棄権者を含む全有権者数に対する得票数の割合を意味する。絶対得票率を使うことで、投票率の変動などの影響を排除し、自民党の実力を測ることができる。単純に得票数をみることもできるが、有権者数の増減の影響を取り除くには、それに対する割合をみなければならない。
衆議院総選挙での自民党の絶対得票率は、1980年代から1990年代初頭にかけて、30~35%であった。ところが、自民党の分裂によって非自民連立の細川護煕政権が成立した1993年の総選挙で24.3%に落ち込む。1996年の総選挙から中選挙区制に代えて小選挙区比例代表並立制で実施されているが、それ以降、小選挙区ではおおむね25%前後、比例代表では15~20%で推移している。大勝した2012年と2014年の総選挙も、この水準にとどまっている。
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