BOSS新CMが描いた「企業戦士」時代の終わり コーヒーCMは「働く男」をどう描いてきたか?

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そのトーンが変化したのは、「その疲れに、リゲインを」とコピーを刷新した「ゴミ出し」篇からだった。佐藤が演じるのは、疲れが抜けない出勤前のサラリーマン。ゴミ出しの際、ゴミ袋と間違えてうっかりアタッシュケースを捨ててしまいそうになり、慌てて取りに戻るというコミカルなストーリーだ。1997年4月度のCM好感度調査で6位となった。その後、佐藤浩市が演じるお疲れサラリーマンのシリーズは、3度のナンバーワンを獲得する大ヒットシリーズとなった。

■2000年~2009年

21世紀に入り、ジョージアの「明日があるさ」シリーズが始まった。サラリーマン役の浜田雅功、東野幸治、間寛平ら吉本興業のお笑い芸人たちが「明日があるさ」を歌いつなぐ。仕事に向き合いながら前向きに生きていく姿を描いて、2000年9月度の1位を獲得している。このシリーズは、2003年まで続いた。シリーズの最後は、仕事に失敗して会社を辞めようとした浜田が松本人志のタクシーに乗り、行き先を「明日へ」と告げる作品だった。

ライバルのボスは、2006年から宇宙人ジョーンズシリーズがスタート。ジョーンズを演じるトミー・リー・ジョーンズが人間に変身し、CMごとにさまざまな職業人に姿を変えて地球調査をしていく。世相を反映したドラマ仕立てのストーリーと、ジョーンズがつぶやく感想も、見所のひとつ。「この惑星では、つねにスピードが求められる」「この惑星では、領収書がないと精算できない」など、日本人の職場の日常を客観的に鋭く、ウィットに富んだユーモアで切り取る。このシリーズは、今も続く超ロングランの人気シリーズとなっている。

「24時間」から「3〜4時間」

■2010年~

2014年にスタートしたジョージアの新シリーズは、「世界は誰かの仕事でできている」がキャッチコピー。ひたむきに働く日本の男たちを応援するシリーズだ。山田孝之がとび職や営業マンなどさまざまな職業人に扮し、シリアスに、ときにはコミカルに職種の特徴をとらえた高い演技力で演じ分ける人気シリーズとなっている。

2014年、リゲインは、「リゲイン エナジードリンク」をサントリーから発売。かつて一世を風靡した「♪24時間戦えますか」と同じ楽曲で、「24時間戦うのはしんどい」「3、4時間戦えますか」と歌詞を変えてエナジードリンクの特徴を訴求した。

そして、冒頭で紹介したサントリークラフトボス新CMのキャッチコピーは「WORK & PEACE」。ワークライフバランスを考えて、誰かと敵対せずに仕事と心の平和を共存させようというのがテーマだ。

「24時間戦えますか」と歌っていたバブル時代とは打って変わって、今のムードは「職場は戦場」「ビジネスマンは企業戦士」とは対極のところにあるのだ。

関根 心太郎 CM総合研究所 代表

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せきね しんたろう / Shintaro Sekine

1973年生まれ。1999年株式会社東京企画/CM総合研究所に入社。システム開発・データベース構築の責任者を経て2014年より現職。消費者3000人を対象としたCM好感度調査を中心に、テレビCMの広告効果測定および研究分析を実施。このほか企業へのコンサルティングや情報提供を通して、広告活動の最適化に向けた課題解決のサポートを行っている。

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