「ネット通販」にすがるアパレルの密かな苦悩

大型モールに頼らず生き残る方策とは?

ここでポイントとなるのが、アクセシビリティです。商品が買いやすいように設計されていて、注文してからすぐに届く。その大前提として、在庫にもつねに気を配らなければなりません。もし欲しい商品がA店になかった場合、「じゃあB店で買おう」とあっさり顧客が離脱してしまう可能性があるからです。

在庫に関しては、商品を提供しているブランド側も同じ課題を抱えています。複数のモールに担当者がベタ付きになっていて、「この商品が売り切れたから、他から移動させよう」という補塡をシステムとマンパワーで行っているのが現状。各モールには多くのアイテムが並んでいるため、膨大な人件費がかかっています。

さらに、1時間以内の配達をうたう「アマゾンプライムナウ」を始め、アマゾンが当日配達サービスを提供していることで、商品がすぐ届くことはいまや当たり前。在庫管理の一元化や、受注から配送までの効率化が喫緊の課題となっています。最近では、無線通信によって商品の動きをリアルタイムに把握できる電子タグ「RFID」などが登場していますが、まだまだロジスティックは整備されていません。

もっとも、当日配達という選択肢があることはお客様の満足度を高めますが、捉え方を変えると、“お客様は神様”という考え方に基づいているとも言えます。あまりにもお客様本位になりすぎると、どこかにしわ寄せが来てしまいます。実際、ヤマト運輸が、アマゾンの当日配達サービスからの撤退を検討しているように、配送業者は疲弊し始めています。

それでも、マスを相手にビジネスを行う以上、「より早く・より便利に」を求める世論に左右されるのは致し方ありません。これからは、そこに付いていくだけの気力と体力がさらに必要となる時代になっていきます。

「大手モールとの付き合い方」で岐路に立たされている

こうして「どこでも買えるものを、より便利に」提供してきた大型モールですが、最新の動きとして見られるのが、ゾゾタウンを運営するスタートトゥデイをはじめとした、運営元のPB(プライベートブランド)開発です。利幅を大きくしようとすれば、PB商品を作って販売するのが最も効果的であり、今後もこの動きは進んでいくと私は見ています。

なんといっても、運営元は顧客のビッグデータを保持しています。これまで蓄積してきた大量の購買情報を活用すれば「白のTシャツはクルーネックが売れやすい」「ワンウォッシュジーンズはひと月に何本くらいさばける」といった動向を的確に読み取ることができます。

モールに出店しているブランドからすると、自分たちの洋服の購買履歴を利用され、間接的にユーザーの獲得をサポートしていることにもなります。ただ、そこで袂(たもと)を分かつことになるかと言うと、そうはならないでしょう。モールという販路を失うことは、ブランドにとって大きな痛手だからです。割り切って付き合いを続けるか、独自のチャネルを持つか。ブランドは今、岐路に立たされているといえます。

次ページ「ここでしか買えないモノ」を扱うECの戦略
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