南スーダンは自衛隊撤収で「終わり」ではない 国際社会を悩ます「世界で一番若い国」の破綻

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そもそも“駆け付け警護”という意味不明の概念は国際法にはなく、ある国の将校は『わけのわからない日本の国内論議を現地に持ち込まれても困る』と迷惑がっていた」(日本の大手紙特派員)。治安情勢が悪化した昨年7月以降は、本業の道路補修も活発ではなかったようだ。

今さら蒸し返すのも恥ずかしいが、現地とのズレの最たるものは、防衛省の「日報隠し」問題をめぐって、稲田朋美防衛相が「憲法9条上の問題になるので『戦闘』ではなく『武力衝突』という言葉を使っている」と国会答弁したことだ(今年2月8日)。

事実上の内戦状態に陥り、PKO参加5原則の「紛争当事者間の停戦合意」が明らかに崩れた中での無責任な“言葉遊び”に、強い違和感を覚えた人は多かったはずだ。

南スーダンへの関心が急速に薄れるおそれ

安倍首相が3月10日、自衛隊撤収を唐突に発表した際に「南スーダンの国づくりが新たな段階を迎える中、自衛隊が担当するジュバの施設整備は一定の区切りをつけた」と述べたのもまったく意味不明で、現地情勢を少しでも知る者なら耳を疑ったに違いない。

この時点で撤収を発表した本当の理由は、大方のメディアが推測するとおり、「自衛隊に犠牲者が出れば政権にとって大打撃になる。治安がこれ以上悪化する前に、体裁を取り繕いつつ退散してしまおう」ということに尽きるのではないか。

PKO派遣を通じた国際貢献のあり方については、もう一度きちんと議論を積み重ねる必要があると思うが、それは本稿の主題ではない。筆者が懸念するのは、自衛隊がいることで日本でもニュースになっていた南スーダンへの関心が、これから急速に薄れていくだろうということだ。

「過去最長の派遣」といっても、自衛隊PKOの関与は一時的なものにすぎない。2005年の内戦終結後、独立前の「南部スーダン」時代からJICAの復興・開発支援、NGOの人道支援が行われてきた。援助関係者は国外退避中だが、JICAは南スーダン難民が流入するウガンダ北部地域の支援などを実施している。

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