南スーダンは自衛隊撤収で「終わり」ではない 国際社会を悩ます「世界で一番若い国」の破綻

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ウガンダ北部アジュマニ県に逃れた南スーダン難民。難民の数は現在150万人を超える(2014年5月、筆者撮影)

残念なのは、現地でも期待が高かったジュバのナイル川架橋、河川港や上水道整備といった市民生活に直接役立つ緊急プロジェクトが、再開のメドもなく工事中断を余儀なくされていることだ。

国際テロの根拠地にしてはならない

国際社会の全面支援を受けて国づくりに邁進するどころか、政府内の主導権・利権争いが“民族抗争”の体裁で収拾不能なまで拡大した南スーダンの惨状は、「国連や先進支援国はどこで何を間違ったのか」「平和を実現する意思を持たない政府を支援していいのだろうか」という悩ましい論議を引き起こしている。そうした無力感を多くの援助関係者が共有しているが、「じゃあ手を引きましょう」という話にはならない。

国際政治学者の田中明彦・政策研究大学院大学学長は、JICA理事長時代に南スーダンを訪れた際、筆者のインタビューにこう答えている。

「アフガニスタンから中東・北アフリカに至る地域は、地政学上の『21世紀の不安定領域』だ。南スーダンのような脆弱国を放置すれば、国際テロ組織の根拠地になるおそれがある。そうした国々を安定させることは、国際社会の安全保障のうえで極めて重要であり、日本の国益にもつながる」

さまざまな見解はあろうが、筆者はこの説明に尽きると思う。

1つの国家が実質的に崩壊し、難民が大量流出することによる甚大な影響、テロ組織が混乱に乗じたときの始末の悪さは、今日の中東・欧州情勢を見れば一目瞭然だ。日本も無縁ではありえない。それでも自衛隊PKO撤収をもって、本質的な問題まできれいに忘れてしまうのだろうか。

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