小田急が1年も前から新ダイヤをPRする事情 複々線化で「混む・遅い」イメージの払拭狙う
小田急線の混雑率は首都圏でも有数のレベルだ。混雑率が200%を超えていた1990年代初頭までと比べれば緩和されてはいるものの、国土交通省の2015年度データによると、最混雑区間である世田谷代田―下北沢(ともに世田谷区)間のピーク時の混雑率は191%。大手私鉄では東京メトロ東西線に次いで2番目に高い。
混雑が激化するようになったのは高度経済成長期。郊外の沿線で急速に進んだ宅地開発によって利用者が急増し、昭和30年代末には朝ラッシュ時に列車の間隔を極力詰めて増発するため、急行や準急が各駅停車を追い抜かない「平行ダイヤ」が導入された。混雑率は上昇する一方、朝の都心部ではノロノロ運転が常態化し、いつしか小田急といえば「混む、遅い」というイメージが定着するようになった。
複々線化で生活はどう変わるか
この対策として小田急が進めてきたのが複々線化だ。東北沢―喜多見(ともに世田谷区)間の高架・複々線化が都市計画決定されたのは、今をさかのぼること53年前の1964年。現在は和泉多摩川(東京都狛江市)―梅ヶ丘(世田谷区)間が完成しており、現在は2017年度末の完成に向け、梅ヶ丘―東北沢間の工事を進めている。
同区間が完成すれば、すでに完成した区間と合わせて和泉多摩川―東北沢間の約10.4キロメートルが複々線となり、ラッシュ時の増発と所要時間の短縮が可能になる。混雑率は160%程度まで低下する見込みだ。
工事は長年続いており、小田急線で都心に通う利用者には「複々線」の言葉そのものはおなじみだ。だが、最終的にいつ完成するのかについての認知度は決して高くないのが実情。さらに、完成したところで具体的にどのような効果が出るのかについても、それほど知られていないという。
そこで「複々線の完成によって生活がどう変わるか、どんなメリットがあるのかをなるべく早い段階から周知し、理解していただければ」(菅谷氏)と、複々線化の完成・ダイヤ改正より1年以上早くプロモーションを行うことになったわけだ。
年明けから開始したのは、引っ越しの多い時期である春を控え「新しい生活が始まる時期に(来年の複々線化完成について)思い浮かべてもらうことで、沿線の方には引き続き住み続けてもらい、沿線外の方には『次は引っ越してみよう』と選んでもらえるように」との狙いがある。
同社交通企画部課長代理の飯田尚宏氏は「例えばもともと沿線に住んでいて、地方に赴任するなどしていた方が首都圏に戻ってくるとき『小田急は混んでいて時間もかかる』というイメージから、沿線に戻って来ない方がいる可能性があると思う」と指摘する。「選ばれる沿線」に向け、混んでいて遅いというイメージをなるべく早く塗り替えることが急務なのだ。
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