1回3000円「お寺婚活」に男女が殺到する理由 マナー守れぬ会員は、スパルタ禅僧が「一喝!」

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実際、吉縁会では入会費・年会費・成婚料などを支払う必要はいっさいない。かかるのは、当日かかった経費3000円程度。もちろん、お坊さんも無給だ。「これは営利目的の事業ではありません。困っている人がいるなら救う、という仏教の教えの中にいるお坊さんたちが『手伝うよ』と言ってくれるのがお寺のいいところ。これが企業なら、どうしても人件費の問題が出てきます。そうすると、利用者がその費用を負担しなければならなくなりますから」(木宮氏)。

もともとお寺という場所は、縁を結ぶ場所でもある。婚活をサポートしても、おかしくはないはずだ。

「とはいえ、最初は本山や住職、檀家さんや地域の人々に非難されるのでは、と思いました。でも、1度もお叱りを受けなかった。むしろ、『もっとやりなさい』『頑張れ』と応援されるほどです」(同)

吉縁会の婚活イベントがビジネスでないなら、参加者も“お客さま”ではない。そのため、ある程度主体的に動かなくてはならない。まず、吉縁会の会員になるには、お寺で開かれる年に2回の登録会に本人が出向く必要がある。

意味なく面倒を強いているわけではない。「わざわざお寺まで出向く」「時間どおりに登録会に行く」「登録に必要なものを用意する」など、あえてハードルを設けることで、本気で参加したい人に登録をしてもらう、という目的がある。

初回開催時はそのルールを設けなかったため、申込者のほとんどは独身の子どもをもつ親だった。当日、だまされて連れてこられた部屋着姿の子どもが、親とお寺の駐車場でもめる、という驚きの光景も目の当たりにした。そんな失敗を経て今のルールが出来上がったのだ。

人間としてダメな人には、ちゃんと叱る

マナーが守れない会員に対しては、叱ることもある。

「会をドタキャンしたり、相手に失礼なことをしたり、あるいはあいさつひとつできない、という人がいたときは、ちゃんと叱ります。きちんとした人のあり方や生き方を伝えて理解してもらえば、結果として結婚にもつながるからです」(同)

会員からは、恋愛相談も来る。「時には1時間以上電話で話すこともありますよ。誘いたいけどフラれたら怖い、という悩みには『年内に5人フラれるぐらいで行きなさい』と。苦しいことは必ずある。

一緒に水引きを作ることで、交流を深める(写真:吉縁会提供)

でもそれは、そのことが起きたときに苦しめばいい。起きる前から苦しむ必要はない、とアドバイスします。予防接種の前は嫌だけど、痛いのは一瞬ですよね。その瞬間だけ痛がればいい。1週間も前から、その一瞬のために憂鬱になることはない。そして、『絶対に失敗しないように』と用意周到に準備する必要もない。フラれたら次に行けばいいだけです。そんな話をざっくばらんにできるのは、われわれにとっても、参加者にとってもメリットなんです」(同)。

会の当日は、60~400人ほど(お寺の収容人数による)が一堂に会す。開会式のあと全員でご本尊にお参りをし、お坊さんが良縁祈願をして会が始まる。お守りが授与されるのもお寺らしい。その後、坐禅体験、和菓子や水引き、数珠作りなどの仏教体験をする。ここで、近くの人と協力しながら進めることで、親睦を深めていく。そして、いよいよメインの「談話時間」。1人当たり5分で自己紹介をし、どんどん席を動いていく。これは一般的な婚活イベントとも似ている。特徴的なのは会終了後の「申請」イベントだ。

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