――読書会とは異なる目的の人も来てしまいそうですね。たとえば、恋愛や結婚の相手を見つけることです。
参加の動機は不純でも構わないと私は思っています。私は中学生の頃にギターを始めました。カッコよく見えそうだし、モテたいから、という気持ちがあったことは否めません。でも、ギターをやっているうちに夢中になり、モテようがないほどのめり込んでしまいました。
読書も同じだと思います。子どもの頃、スポーツ万能な子がモテているのが悔しくて、本を読みあさった人もいるはずです。オレは内面を磨くんだ、知的なオレを見てくれ、と。そのうちに読書が本当に好きになっていくのだと思います。
――いい話ですね。
猫町倶楽部は参加条件として課題本を必ず読んでくることを掲げています。だから、不純な動機だけで続けて参加することは難しいのです。逆に、ちゃんと課題本を読んで毎月参加していれば、気の合う友達が必ずできます。
自主的でフラットな読書会
――友達関係の中から恋愛や結婚の芽を見つけたい人にはぴったりの場所ですね。同性の読書仲間から「いい人」を紹介してもらう機会も増えるはずです。
私が言うのも変ですけど、猫町倶楽部のいいところは参加者の職業や年齢がバラバラで、関係性がフラットなことです。ハンドルネームで参加することも多く、仲良くなった後でもお互いの本名や年齢を知らなかったことも少なくありません。
会社などでは年齢や立場でヒエラルキーが必ずできてしまいます。その点、共通の本から親しくなる関係は社会的な属性を後回しにして無条件で付き合うことができる。すごく心地いいですよ。
* * *
山本さんによれば、猫町倶楽部に参加する人の男女比は約半々。ビジネス書が課題本となる「アプトプット勉強会」の参加者は男性が約7割で、文学作品がテーマの「文学サロン月曜会」は女性が約6割らしい。友達づくりや婚活を視野に参加を希望する人は参考にしてほしい。
インタビューの後、1時間以上も楽しく雑談をしてしまった。山本さんは会社のオーナー経営者で、かつ日本最大の読書会の代表である。しかも筆者より一回り近く年上だ。それなのに威圧的なところがまったくない。話題が豊富で、よく笑い、適度に親切で、淡々としている。読書会を自ら企画する際のアドバイスもしてくれた。
「読書会の幹事だからといって、その本に関していちばん詳しい必要はないと思います。私は猫町倶楽部の知性を代表していません、と公言しています。飲み会の幹事みたいなものです」
代表の山本さんがこのように肩の力が抜けた姿勢なので、猫町倶楽部は多種多様な人たちを引き付けているのだと思う。ビジネスの思惑も強力なカリスマも存在しない、自主的でフラットな読書会なのだ。
こうした場が日本社会にどんどん増えていけば、友達や恋人や結婚相手がいないことで悩む寂しい大人がいなくなり、もっと朗らかで活気のある世の中になる気がする。
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