生命保険業界が「顧客本位」とはいえない理由 金融庁長官の懸念を真剣に受け止めるべきだ

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決算情報から、還元率が約97%であることがわかる埼玉県民共済と比べると、顧客にとって異様に不利な仕組みに感じられます。そもそも、自分で試算しないと還元率がわからないこと自体、顧客本位ではないと感じます。それは、筆者が限定的な保険活用が望ましいと考える最大の理由です。

今回、5項目を書き出しながら、痛感したのは「悪循環」です。保険会社の人たちが加入している団体保険のような保険が、一般向けに販売されていないのはなぜでしょうか。

保険会社は「儲かる商品」を売ろうとしている

格安な商品ではもろもろの経費を回収し、収益を出すのが難しいからでしょう。複数の特約などを付加した比較検討が困難な商品が多いのは、価格設定の妥当性が問われにくくなるからだと思います。

ただし、難解な商品は、ネットや通販では売れにくいため、対面販売が中心になり、動機づけのために、代理店販売手数料などは金融商品の中でも破格の高さに保たれます。

とはいえ、商品価値の評価が難しい保険を売り続けるのは容易ではないため、営業部門の人材離脱は避けがたく、人材の補充や、担当者の退社に伴う解約等、新たな経費の発生と収入減が価格に反映された商品が組成・販売されるのです。

不安をあおる情報に比べ、保険金・給付金の支払い実績や見込み、さらに還元率のような情報が提供されないのも、販売側の都合で、顧客本位とは言いがたい商品やサービスが流通していることが明らかにならないようにするためではないでしょうか。

森金融庁長官は講演の最後のほうで「日本人は優秀で勤勉です。(中略)それを引き出すような経営・ガバナンスが必要です」と語っています。

筆者は、保険業界関係者の優秀で勤勉な資質は、主に「会社のため、組織のため」に使われてきたように感じています。顧客の甘さも一因だと思います。伸びしろは大きいのです。代理店に相談料を払い、保険料の還元率などを問う顧客が増えると、商品やサービスは、今よりずっと向上するのではないでしょうか。

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