「ニュースの作り方」が根本的に変わったワケ BBCはなぜスロージャーナリズムに挑むのか

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――若い人こそ国際ニュースに関心を持っている?

中には「メディア業界は破綻していて、質の高いニュースといえど生き残るのは難しい」という人もいる。が、それは事実ではない。実際、視聴者は増えているし、ニュースに対する関心も増している。特に若い視聴者は、自分が気にかけているニュースを深く知りたいという欲求が強く、テレビ局なり、出版社なり、そうしたニュースを配信しているところと、より強くかかわりたいと考えている。

――SNSの普及によって、人々はより身近なニュースにしか関心を持たなくなっているとも言われますが……。

確かに4、5年前のフェイスブックには、個人の話とかバイラル的な動画ばかりが流れていたが、今ではフェイスブックに本当に多くのニュースが流れるようになっている。今では多くの人がニュースをシェアし、シェアするニュースによって自分の考えや信条を示すようになっている。これがニュース企業にとって悪い話であるわけがない。

ニュースはいまや、人々が主体的に日々かかわるものになっている。昔のように朝、新聞を読んだり、テレビを見たりするだけで終わるのとは違う。環境自体は悪くない。あとは、それぞれのメディアがその環境をどう生かすかだ。

BBCは誰をターゲットに放送しているのか

――国際ニュースがより読まれたり、見られたりするための工夫は。

どういうニュースが関心を持たれるかについてはチャレンジし続けている。たとえば、最近では「解決型ジャーナリズム」周りで何かできないかを模索している。視聴者から「気が滅入るようなニュースばっかりやらないで、たまには何か前向きな動きも伝えてほしい」という声もあり、それぞれの国やコミュニティの取り組みでうまくいっていることを、掘り下げて伝えるようなこともしている。

たとえば、「So I Can Breath」というシリーズでは、いろいろな国やコミュニティがどうやって大気汚染と戦い、克服しているのかを配信している。視聴者は、自分の身近なニュースや硬派なニュース、速報……いろいろなタイプのニュースに関心を持っているが、それが自分とどのようなかかわりがあって、どういう解決策があるかを知りたいと考えている。

――国際報道で難しいのは、誰の視点でニュースを伝えるか、という点です。場合によっては、非常に偏った見方になることもあります。

多くの人は、BBCは英国の公共放送で、政府からは独立しており、英国人の受信料によって成り立っていて、英国民のためにニュースを提供していることをわかっているはずだ。一方で、われわれは、インドのニューデリーやシンガポール、東京など世界46カ国に拠点を持つ報道機関で、それぞれの国でその国の母国語でニュースを提供している。われわれは30カ国語で放送しており、それぞれの国に記者がいることを考えると、各国に根差した報道を行っているメディアといえる。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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