あのギョウ虫検査が義務ではなくなった事情 1949年検査では64%の小学生に卵があった

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お尻にセロファンのギョウ虫検査に話を戻しましょう。

日本も終戦直後は寄生虫の感染率は人口の8割を超える寄生虫大国で、その予防や対策、撲滅は国内でも大きな課題の1つでした。

1949年に行われたギョウ虫検査では、小学生の実に約64%がギョウ虫の卵を持っていることが確認されています。このようなことから、1958年には小学校3年生以下の学童にギョウ虫検査が義務づけられました。ただ、経済発展に伴う下水道やトイレといった衛生環境の改善や、化学肥料の導入、診断や治療の進歩によって寄生虫感染者は激減しました。

過去10年間で寄生虫の卵を保有している小学生が1%を切ったことから、最早、小学校で寄生虫検査をする意義は乏しく、結果的にギョウ虫検査の義務化も廃止された、というわけです。

局所的に感染が広がることも

お尻にセロファン検査の義務化は廃止されましたが、だからといってギョウ虫による病気がなくなったわけではありません。ギョウ虫の場合は特に地域差が大きく、局所的に感染が広がることもあります。

また、最近では、グルメブームによる生の食品や、輸入・自然食品の摂取、ペットブームなどによって、これまでにはあまり見られなかった新たな寄生虫による病気も増えてきています。

さらに、開発途上国を含む海外旅行の増加により、本人が気づかぬうちに寄生虫に感染しているケースも少なくありません。実際、筆者の友人もカンボジアに1週間ほど滞在していた間に寄生虫に感染。夜になると皮膚の表面にミミズのような形の寄生虫がモッコリと姿を現すそうですが、病院で診察してもらう昼間の時間帯はコッソリと姿を隠していたそうで、証拠写真を持参して通院していました。日本ではあまり見られない寄生虫による病気の場合、診断と治療に時間を要することもあるようです。

そして、前回の結核の話にも出ましたが(日本はなぜ「結核中蔓延国」から脱せないのか)、日本を含む先進国でも、移民や高齢者、エイズ患者など免疫力の低い人たちは、寄生虫による病気にかかりやすい傾向があります。今後、国内でも外国人が増えていくことを考えると、これまでにはなかった寄生虫による病気が増える可能性も高まっていくでしょう。

多くの寄生虫による病気は、地味です。エボラ出血熱のように短期間で高い致死率を伴う病気ではないため、社会的注目度はあまり高くありません。また、感染者の多くは開発途上国の社会的弱者のため、声なき声が拾い上げられることも、多くはありません。

ただ、世界には寄生虫による病気は確かに数多く存在していて、今でも世界の人口の約4割がかかっていることは事実です。緊急性が高く、注目の集まりやすい病気に対する対策も必要ですが、下痢や肺炎などと同じく、地味でも多くの人々が苦しんでいるこれらの病気に対する対策が、これからも着実になされることを期待するばかりです。

金森 サヤ子 大阪大学 特任講師

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かなもり さやこ / Sayako Kanamori

2017年4月より、大阪大学 未来戦略機構第一部門 超域イノベーション博士課程プログラム 特任講師。2009年に外務省 国際協力局 多国間協力課に入省、地球規模課題総括課を経て、国際保健政策室 事務官。国際保健外交政策の立案や戦略策定に従事。その後、一般社団法人ジェイ・アイ・ジー・エイチ(JIGH)調査事業本部長としてポリオ根絶活動をリードしたほか、医療の海外展開に従事。2002年に筑波大学第二学群生物学類卒業後、ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院にて医学寄生虫学修士号取得。ビジネスコンサルタントを経て、2009年に東京大学医学系研究科国際地域保健学教室にて保健学博士号を取得。専門はグローバルヘルス、保健政策学、保健外交、ヘルス・プロモーションなど。

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