メイ英首相が突然の解散総選挙に動いた理由 再び「絶対に負けられない戦い」に挑む

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当然、「安定した足場」を確保するには(1)がメイ首相の基本シナリオだ。(1)のシナリオが実現しない限り、交渉期間内に離脱協定の合意に至る公算が小さいと考えているからこその決断だろう。既に報じられているように、与党・保守党と最大野党・労働党の支持率は20%ポイント以上開いており、メイ政権の思惑通りになる可能性は高い。(1)ならば粛々とハードブレグジットに向けた歩みが続くだけである。現状、市場はこうしたシナリオを好感しているものの、後述するように、筆者は持続性があるとは思わない。

だが、(2)現状維持という結末もなくはない。3月29日の離脱通告前後から金融街シティの地位低下やこれに伴う雇用の喪失や資産価格の下落、ひいては中長期的な英国経済への打撃を不安視するような論調が再び見受けられる。与党・保守党が思惑ほど議席を伸ばせず、議会の勢力図が現状とたいして変わらない可能性もある。

この場合、「勝てる勝負」を落としたメイ首相の求心力は当然低下し、ある程度は野党勢力の意を汲んだソフトブレグジット方針に舵が切られていく可能性も出てくる。どちらかと言えば、こちらのほうがポンド買いに思えるが、「メイ政権がハードブレグジットにこだわり、交渉期間内に終わらずノーディール」というシナリオもありうるため、一概にそうは言えない。

メイ首相が負けても離脱方針は撤回不可能

可能性が低いと見られる(3)も基本的には(2)と同じ結末だろう。与党・保守党の敗北は当然メイ首相の辞任につながるが、だからと言って現在の野党勢力も離脱方針の撤回まで主張しているわけではない。(2)同様、新政権の下でソフトブレグジットが模索されることになろう。また、EU側からもトゥスク大統領の報道官が「英国の選挙が(離脱に向けた)27か国の計画を変えることはない」とコメントしたと報じられている。今さら残りたいと言っても、離脱方針は撤回不可能であり、それがリスボン条約第50条発動の「重み」である。とはいえ、与党・保守党が敗北すればスコットランドの独立を賭けた住民投票も現実味を帯びてくることには留意したい。

いずれにせよ、交渉期限終了に向けて時計の針が動き始めている中での賭けであり、メイ首相に許された選択肢は圧勝しかなく、それ以外は彼女の進退問題にまで発展する話になる。

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