フランスでも「EU離脱派」が大統領になるのか 極右ルペン失速、追い込む極左メランション

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フィヨン氏の人気も復調の気配である。

家族の架空雇用疑惑のスキャンダルが浮上し、失速したとはいえ、その悪影響も一巡した感が強い。マクロン氏と同様、「親EU」だが、人やモノの自由な往来を定めたシェンゲン協定の加盟国に対して国境管理を行うことを公約に掲げており、移民・難民には厳しい。

経済政策では50万人の公務員削減、付加価値税(VAT)の増税、年金支給開始年齢の62歳から65歳への引き上げなど、財政削減に一段と踏み込んだ政策を打ち出す。財政規律重視で知られる、ドイツの政財界で強い影響力を持つ同国のコンサルティング会社創業者、ローランド・ベルガー氏は「フィヨン氏が大統領になれば、フランスの経済改革が進む。マクロン氏では改革がどこまで進展するのかが疑問」と分析する。

理想の大統領は知性、品格、カリスマ性

フランス人にとって理想の大統領像は、知性や品格に加えて、「カリスマ性を兼ね備えた人物」(ル・モンド紙のメスメール氏)。「オランド現大統領にはそこが欠けていた」(同)。それを考えれば、メランション氏の派手なパフォーマンスや巧みな話術が多くの有権者を引き付けているのも、納得がいく。みずほ総合研究所の吉田健一郎・上席主任エコノミストは「各候補の政策が注目されている雰囲気はない」と指摘する。

4候補のいずれが大統領になるにせよ、政権運営にも不安が残る。フィヨン氏は最大野党の候補者だが、ルペン氏率いる国民戦線も国民議会ではわずか2議席。マクロン、メランションの両氏も、連立政権づくりに奔走しなければならないだろう。フランス人が「大西洋の向こう側(outre-atlantique)」と呼ぶ国では、政権与党の新大統領でさえも議会運営に苦労している。

だが有権者は、そんなことをさほど気に留めていないようにも見える。むしろ、イメージ戦略の巧拙が最終的な勝敗を分けそう。失敗すれば、致命傷になりかねない。それだけに票の行方は極めて流動的だ。

松崎 泰弘 大正大学 教授

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まつざき やすひろ / Yasuhiro Matsuzaki

フリージャーナリスト。1962年、東京生まれ。日本短波放送(現ラジオNIKKEI)、北海道放送(HBC)を経て2000年、東洋経済新報社へ入社。東洋経済では編集局で金融マーケット、欧州経済(特にフランス)などの取材経験が長く、2013年10月からデジタルメディア局に異動し「会社四季報オンライン」担当。著書に『お金持ち入門』(共著、実業之日本社)。趣味はスポーツ。ラグビーには中学時代から20年にわたって没頭し、大学では体育会ラグビー部に在籍していた。2018年3月に退職し、同年4月より大正大学表現学部教授。

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