が、ハッキリ言っておくが、対北朝鮮攻撃は当面ないだろう。それでは米軍として、中東と北東アジアの2方面同時作戦になってしまうからだ。
米軍は「まだ本気じゃない」と言える明らかな理由
「そうは言っても、空母カール・ビンソンが朝鮮半島に向かっているじゃないか」ですって? 心配な読者は、在韓アメリカ大使館のHPをチェックしてみるといい。本気でドンパチ始めるつもりであれば、まずは韓国に住むアメリカ人たちに急いで警告を発するのが彼らの職務であろう。そんな気配は、どこにもないじゃないか。
もっとも米軍は、兵士の家族を韓国からひそかに日本に退去させる訓練を、昨年11月に(それも7年ぶりに!)実施している。そのつもりが全然ないわけではないのであろう。当面は外交で揺さぶりをかけつつ、譲歩を引き出す構えと拝察する。
シリア空爆をめぐっては、ホワイトハウス内でも対立があったらしい。推進派の中心は大統領の娘婿、ジャレッド・クシュナー上級顧問。これをジェームズ・マティス国防長官、ハーバート・マクマスター国家安全保障担当補佐官など「安保のプロ」が支えている。
反対に回ったのはスティーブン・バノン首席戦略官。元右翼系メディアの経営者、映画プロデューサー、ゴールドマンサックス、そして海軍という多様な経歴を持つ。大統領の信任が厚く、大統領就任演説を下書きし、過激な大統領令をいくつも準備してきた。今年2月には、「世界で2番目に強力な男」と『タイム』誌に紹介されている。
このバノン、政治家というよりはイデオローグ(理論的指導者)である。既存の政治体制を破壊したいという暗い願望を抱いている。「オルタナ右翼」とも呼ばれるが、「レーニン主義者」や「経済ナショナリスト」を自称する。選挙期間中には、ラストベルト重視戦略でトランプ氏に勝利をもたらした。
つまりトランプ支持者のハートを、いちばんつかんでいるのがこの男というわけ。政権発足後は「首席戦略官」という職務につき、「壁」の建設から移民制限まで選挙公約をすべて実現しよう、と過激なポピュリスト路線に走っている。
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