グランクラスより儲かった国鉄の「特別座席」

1カ月ちょっとで元が取れた「パーラーカー」

以上の計算から、1列車当たりの収入は8万2800円(現在の貨幣価値に換算して、約47万2500円)だ。

当時、12両編成を組む151系は4編成がそれぞれ東京-大阪・神戸間を「こだま」または「つばめ」として1往復しており、各編成とも1日に2本の列車を受け持っていた。便宜上「こだま」も「つばめ」と同じ乗車傾向を示していたと考えれば、パーラーカーの1日の収入は16万5600円(同、約94万5000円)となる。第2案からパーラーカーの製造費は2690万円(同1億5300万円)と仮定しよう。製造費は何とわずか163日、5カ月余りで償還できてしまう。

一方、現在の新幹線E5系「グランクラス」の償却期間は、前回記事の試算では乗車率100%で342日(約11カ月)、75%で473日(約1年4カ月)、50%で683日(約1年11カ月)だ。

仮にパーラーカーの代わりに二等車を連結したら製造費はどのくらいの期間で償却できるのであろうか。二等車で454.1キロメートルを乗車した場合、運賃は1040円、特急料金は600円、座席指定料金は100円の計1740円(同9900円)となる。パーラーカーのような先頭車の二等車版は定員が56人、乗車率は99パーセントであるから55人が乗っていた計算となり、1列車当たりの収入は9万5700円(同54万6000円)だ。パーラーカーと同じ考え方で、1日当たりの収入は19万1400円(同109万2000円)となる。

先頭車の二等車版の製造費も2690万円と考えると、製造費を償却するまでの期間は最短で141日と、4カ月ほど。パーラーカーよりも償却期間が短いのは定員が多いうえ、乗車率が高いからであろう。

短命でも十分稼いでいたパーラーカー

国鉄にとってパーラーカーをはじめとする151系は「カネのなる木」であった。パーラーカーを連結するよりも、いまでいう普通車を連結したほうがより収入は増えたはずだが、国内外の要人の利用も多い東海道本線の特急列車には、特別座席を備えた車両の必要性は今では考えられないほど高かったのであろう。

それに、使用する列車に応じてパーラーカーの連結の有無を区別しなかった結果、初期投資額は抑えられたのだから、少々の減収など国鉄にとって何の問題もない。むしろ、パーラーカーのような車両を連結していないことで生ずるデメリットのほうが大きかったと言える。

企画委員会での発言のとおり、151系の各車両は東海道本線の特急列車に使用されていた間に十二分に稼いだ。車両としての物理的な寿命を迎えていなかったし、当時は輸送力不足が深刻であったので、151系は東海道新幹線の開業後に各地に転用されたものの、経済的な観点ではこのときに廃車にしても惜しくはなかった。パーラーカーについては、設計時の構想どおりに使用された期間が「4年4カ月もあった」と言うべきだ。

(※訂正:1960年当時の151系は1日に8本の列車に使用されていたと記して償却期間を算出いたしましたが、これは延べ本数で、個々の車両は1日に2本の列車に使用されておりました。おわびして訂正いたしますとともに、ご指摘に感謝申し上げます。)

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