異例の東電トップ人事、改革めぐり火種残す 「顔」が去り、役員の平均年齢は7.5歳も若返り

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「若返りに必ずしも賛成ではなかったのでは」と記者会見で問われた廣瀬氏は、「私は反対していない」と言いつつもこう付け加えた。「今回のような大規模な若返りに当たっては、間の飛んでしまう人たちが出てくる。そういう人たちのモチベーションを高めつつ若返りを図ることには難しいところがある」。

廣瀬氏自身、3月17日の電気事業連合会での記者会見で、続投とも受け取れる発言をしていた。

結果的に、廣瀬氏は社長を退くものの、代表権を持たない副会長(福島統括)として残ることになった。反面、廣瀬氏と同年代の役員の多くは退任する。數土氏ら社外取締役の多くも退く。

數土、廣瀬両氏の確執

社内外で広く知られていることだが、數土氏と廣瀬氏の間では経営方針をめぐって昨年来、確執が続いていた。

中部電力と燃料調達事業などを統合した合弁会社JERA。同社の会長に東電の指名委員会が社外から外国人経営者を招こうとしたことに、プロパー起用を重視すべきとの立場の廣瀬氏が反対の意思を示した。昨年2月のことだ。

同3月末には廣瀬社長を交代させる人事が検討されたが、東電OBらによる官邸や自民党への根回しが奏功して廣瀬氏は続投することに。一方、同4月1日付の幹部や一般社員の人事が前日夕方まで決まらず、混乱が起きた。

そのため、數土氏ら社外取締役や経産省出身の幹部は今回、時間をかけて外堀を埋める戦術を駆使した。

それが、昨年7月28日に発表された「激変する環境下における経営方針」だ。その記者会見で経産省出身の西山圭太取締役は、東電が賠償や廃炉費用の膨張など困難に直面していると表明。「あらゆる分野での他社との提携、アライアンス」とともに、「人材の育成、登用を含めた組織能力の強化」の必要性を指摘した。

この経営方針発表を踏まえて昨年9月、経産省は「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」と東電委員会を新設。東電改革を電力システム改革のフロントランナーに位置づけようとした。後者の委員会で川村氏らは、「オブザーバー」の廣瀬氏を前に、組織の若返りや他社との事業統合の必要性を指摘した。

東電委員会は昨年12月、福島事故に関する費用が22兆円規模に増大するとの試算を公表。国による圧力が強まる中で、東電社内の一体感を重視する業界再編より廣瀬氏は追い詰められていった。

もっとも、求心力の象徴だった廣瀬氏の処遇を誤った場合、社内の反発を招きかねない。そこで決まった、代表権を持たない福島統括副会長としての処遇。廣瀬氏は「東電のために役に立つのであれば、副会長でも平社員でも関係ない」と記者会見で述べた。

ただ、経営陣の一角に廣瀬氏という実力者が残ることで社内に安心感が広がる一方、経産省や川村新会長らとの摩擦も懸念される。東電改革は難局が続く。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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