フィンテックで何が起こるか知っていますか 「口座格差」が銀行再編を引き起こす

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では、銀行から見て、どうすれば「預金口座」の位置づけを改善できるか。

まず1つの解が「デビットカード」だ。日本ではあまり普及はしていないが、利用した分がすぐさま預金口座から決済されるというのは、現金に近い使い勝手である。しかし、利用しても基本的にポイントなどはつかないので、正直、「お得感」はあまりない。

より有力なのは「クレジットカード」である。クレジットカードの普及と決済の増加は、預金口座にとっては追い風となりうる。MUFGをはじめとして、今、銀行系クレジットカードの普及が進んでいる。カード利用者に支払い口座として預金口座を指定してもらえば、預金口座からプリペイドに預金がシフトしてしまうのを防ぐ効果がある。デビットカードと比べると、利用金額によってポイントもつくことがあり、利用者からはお得だと評価される。

マイナス金利の中で、なぜ銀行が住宅ローンを積極的に拡大していたのかも、同じく「預金」という視点で見ると理解しやすい。

われわれ利用者からすれば、より金利の低いローンへの借り換えはメリットのある話だが、銀行にとっては事務などの手間がかかるうえに、利ザヤも小さくなった住宅ローンを積極的に集める理由はあまりなさそうに見える。

しかし、住宅ローンは長ければ35年、借り換えであっても5年や10年といった長期にわたって銀行への返済を続けるものだ。毎回の返済のため、当然ながら預金口座は維持される。したがって、銀行から見れば、住宅ローンは「顧客との接点を持つ」ためには重要な商品とも言えるのである。

このように、「低インフレ、低金利」というマクロ環境のもとで、プリペイドやポイントの位置づけが上がり、テクノロジーによってその使い勝手が改善しつつあるというのが現在だ。この環境下では、銀行にとって「預金口座の使い勝手をよくすること」が最も重要になり、そのカギを握っているのがフィンテックなのである。

「デジタルウォレット」を誰が握るのか

では、私たちに身近な預金口座や決済機能は、テクノロジーでどう変わっていくのか? 一言で言えば、一気通貫でさまざまな金融サービスを利用することができる「デジタルウォレット」のような存在が生まれてくると筆者は考えている。

「デジタルウォレット」は、預金口座からの資金移動を簡単な操作で行うことができるもの。また、決済シーンに応じてプリペイドやクレジットカードといった決済機能を活用でき、預金以外の金融商品にも投資ができるようなものである。ビットコインのような仮想通貨も、決済や投機目的であることを考えれば、デジタルウォレットで扱えると便利である。

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