日本のアニマルスピリッツ喚起に必要なこと 稀勢の里、羽生結弦のような人を増やすには?

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米国では、昨秋のトランプ勝利後の株高持続(軽度の調整があっても高値圏推移)が、企業と家計のマインドを押し上げた。米国ではアニマルスピリッツは確かに強まっており、ソフトデータの大幅改善が、今後は生産や消費というハードデータをも着実に押し上げていけるか否かが注目点になってきた。足元では3月のマインド指数の上昇が一服し、2月の個人消費支出は弱く、3月の新車販売の勢いに陰りが見えているとはいえ、米国経済が緩やかに回復している姿は変わっていない。

さて、そもそもアニマルスピリッツとは何であろうか? 一般的には、起業家の投資行動の動機となる、将来に対する主観的な期待。「起業家精神」もしくは「野心的意欲」などと訳されることが多い。経済学的には、英国の経済学者ケインズが「雇用・利子および貨幣の一般理論」の中で使った用語だ。経済活動の多くは合理的動機に基づき行われるが、その一方で、将来の収益を期待して事業拡大を考えるなど、合理的には説明できない不確定な心理に左右されるものであり、その心理を指す言葉である。

期待や自信が持てない日本人

Global Entrepreneurship Monitor(GEM)が2014年に各国の起業に関するアンケート調査を行っている。その中にある3つの項目、(1)事業機会認識指数、(2)知識・能力・経験指数、(3)失敗脅威指数について、日本と他国を比べると、日本の特徴が浮き彫りになる。

(1)は、「今後半年以内に、自分が住む地域に起業に有利なチャンスが訪れると思いますか」との問いに、「訪れる」と回答した成人の割合だ。米国47.2%、ドイツ31.3%に対して日本は7.7%とかなり低い。政府による規制緩和の推進や支援策が必要な部分といえよう。日本型の雇用では、アニマルスピリッツはなかなか育たない。

(2)は、「新しいビジネスを始めるために必要な知識、能力、経験を持っていますか」の問いに、「持っている」と回答した割合。米国は55.7%、ドイツ37.7%に対して日本は12.9%。米国の高さに比べると、日本は一貫して低い状況が続いている。これは教育問題であり、日本ではビジネスパーソンの養成が重要課題だろう。

(3)は、「失敗することに対するおそれがあり、起業を躊躇している」と回答した割合。米国は35.0%、ドイツは48.2%、日本は47.4%。米国よりはやはり高く、ドイツよりは意外にも低い結果。この部分はまさしく、稀勢の里関と羽生選手の爪の垢を煎じて飲みたいところだ。日本では"草食系男子"という言葉もはやったが、やればできるところを見せてほしい。

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