高級ブランドが「オタク」を無視できない理由

時計メーカーがその価値に気づき始めた

ラグジュアリーの世界から見るとオタクは理解不能だし、オタクの世界から見るとラグジュアリーは魑魅魍魎だらけだ。ただ最近、ラグジュアリーの世界は、オタクに歩み寄りを見せつつあるように感じる。少なくとも、以前ほど冷酷ではなくなった。友人のベルナルド・チョンは、医学博士で高額時計のコレクターで、早口でしゃべる「いかにも」な人物である。その彼が、数年前、高級時計協会のアンバサダーに任命されたのだ。時計ジャーナリストでも、セレブリティでもないただのオタクが、アンバサダーになったのである。ラグジュアリーの世界は大きく変わるかもしれない、と当時予感したものだ。

オタク至上主義

ちなみにITの世界には、“ギークメリトクラシー”という造語がある。分かりやすく言うと、オタク至上主義を意味する。オタクを取り込んでサービスとプロダクトを盛り上げるという動きは、ITの世界ではすでに広まっているが、ラグジュアリーの世界では無縁だった。しかし一部の時計メーカーは、オタクの価値に気づきはじめたようだ。コレクターを集めて世界的なイベントを開催したのはタグ・ホイヤーである。オタクたちがにこやかに時計を自慢しあう光景は、ラグジュアリーの人たちが眉をひそめるたぐいのものかもしれないが、結果として、世界的な注目を集めることとなった。

今後、各メーカーはInstagramや、Facebookに注力するだろう。ただし、それらの多くは認知度を上げても、直接購買に結びつくことはない。となると、各社はやがて、オタクを捕まえざるを得ないだろう。なにしろポートフォリオが違うのである。事実、タグ・ホイヤーのイベントが成功を収めた後、筆者は某時計メーカーの広報責任者に質問された。「どうすればギークの皆さんを集められますか?」、と。答えは簡単である。ネルシャツでも参加できること。

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