大学ランキング首位の東大に「足りないもの」 高校教師と人事担当者の評価が順位を左右

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指標別の順位に目を向けると、総合ランキングとは顔ぶれが違うことがわかる。それぞれのトップは、教育リソースでは東京医科歯科大学、教育満足度では国際教養大学、教育成果は東京大学、国際性では立命館アジア太平洋大学となった。

それぞれの上位20校を見てみよう。教育満足度や教育成果は総合ランキングと顔ぶれが似ている。だが教育リソースでは医科大学や理系の単科大学、国際性ではその名の通り「国際」や「外国語」といった名前のつく大学が多くを占めるなど、特徴的だ。前者は収入の多さなどが影響し、後者は大学の性質上、留学生や外国人の教員が多いためと考えられる。

総合1位の東大は教育成果でトップ、教育リソース・満足度でそれぞれ2位だったが、国際性では54位だ。ただ国際性の比重は先述のとおり16%と小さいため、総合順位は高く保たれた。

日本版ランキングについてベイティ氏は、「少子化で大学間の競争も激しくなる昨今、日本の学生の健全な大学選びに役立つ。また、文部科学省が大学の競争力をモニタリングする際の参考にもなる」としているが、海外への発信にも同じくらい力を入れたいようだ。

「海外の学生も(THE誌のホームページ上で)このランキングを見る。日本の大学にとっては、より多くの留学生を引き付けるということが重要。このランキングは国際社会に対して自らの強みを示し、日本の高等教育のユニークな強みを発信するものになる」(ベイティ氏)。

日本は留学生人気を得るチャンス?

タイムズ・ハイヤー・エデュケーションのフィル・ベイティ編集長は「日本の大学はもっと差異化が必要」と訴えた(撮影:今井康一)

実際、世界大学ランキングではランク外の神戸大学、一橋大学、国際教養大学がそれぞれ13位、14位、20位にランクイン。「(これらの大学は日本での知名度は高く)日本人には当たり前に思えるかもしれないが、海外の留学生や企業、研究者にとっては非常に新鮮だ」(ベネッセ学校カンパニー・大学・社会人事業本部の藤井雅徳本部長)。

従来、世界中から多くの留学生を受け入れてきたのは、米国や英国だった。しかし藤井氏は米トランプ大統領の移民制限の意向や英国のEU(欧州連合)離脱決定などを背景に、「昨今の政治的な動きで(英国や米国以外の留学先を検討する)高等教育への影響が予想される。この重要なタイミングで、THE誌が日本版ランキングを世界に発信する。日本の大学がその好機をモノにできるかがポイントだ」と指摘する。

この日本版ランキングによって、日本の大学は世界の留学生を呼び込み、国際性を高めることができるだろうか。

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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