てるみくらぶ「大迷惑な破産」が示唆する教訓 ダメなら適切に廃業するのも経営者の務めだ

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破産(倒産)というと、経営者責任はあるものの、防ぎようのないことと思われがちだが、実は、破産に至るまでに経営者ができることはたくさんあり、知識や意思決定次第で、ここまで周囲に大迷惑を掛けることは避けられた可能性がある。

実際に、弊社が投資を検討したA社(仮名)では、新卒内定者を10人弱抱えていながら3月30日に民事再生をかけたという、今回の内容に近いケースがあったが、資金がショートする前に経営者が民事再生を意思決定し実行に移したことで、スポンサーがつき、従業員の雇用は守られ、取引先も変わらずに取引を続けている例がある。

適切に廃業するのも、突然の倒産で関係者に大迷惑を掛けるのも経営者次第だ。今回のような突然の倒産を引き起こさないためには、私は以下の3点が重要だと考えている。

突然の倒産を引き起こさないために重要なこと

ひとつは、会社の経営数値をしっかりと理解し管理しておくということである。自身の損益計算書や貸借対照表をまったく見ずに税理士に任せっきりにしている経営者も多く、本業の利益水準を指し示す営業利益とはどういったものかなども知らない経営者も少なくはない。

これを人間の体に置き換えれば、日々、体重計に乗ったり、血圧計で血圧を測っていたりしていても、適正体重や適正血圧など、その数値の意味を理解せずには健康管理ができないのと同じである。経営数値を理解せずに経営を行い、実は利益が出ていないにもかかわらず漫然と経営を行っていくことで、徐々に赤字を積み上げ、知らず知らずに資金ショートでの倒産を迎えざるをえなくなる会社も多い。

次に、適切なタイミングで会社を畳むという意思決定を行うのは経営者の責任ということである。たとえば、営業利益がほとんど出ていないにもかかわらず、銀行へ月に50万円の返済を行い、その返済資金をどこかから借り入れながら毎月末の資金繰りを乗り切り、自分でも無理な経営を行っていることを理解しているのにもかかわらず、会社を畳むという選択肢を取れない経営者も多い。

これは、廃業を行うと経営者として負けを認めることになってしまうと感じたり、取引先や従業員に迷惑を掛けてしまうと思ってしまう人が多いからであるが、それは大きな誤解で、事前に廃業の準備をして、取引先を他社に変更してもらったり、従業員の再就職期間を設けたほうが、関係者全体として円滑に物事は進むのである。

次ページ人情味に厚かったりする経営者ほど…
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